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第14話

 こうした下準備があったことから、1559年春に最初に行われた2000人近い最初のミシシッピ川流域を目指した日本人の植民者の移民行動は、順調に進むことが出来たのだ。

 とはいえ、その面々のほとんどが武装兵と言っても過言ではない、物騒極まりない移民団ではあった。


 これはミシシッピ川流域が、日本人にしてみれば完全な処女地といってよく、実態がよく分からなかったためであり、また、ネズ・バース族等からの情報提供により、ブラックフット族等の戦闘に突入する可能性が高いと考えて、まずは防御拠点を設営して農地を開拓していこう、という考えになったからだった。

 そして、その指揮官はというと。


「宇喜多忠家殿、狩猟活動をしている原住民(ネズ・バース族等)と会って、話をしたところ、もう少し先の方に馬車を止めるのに良い土地があるとのことです」

「殿は止めてくれ。俺が戸川と呼ぶように、お前も宇喜多と呼んでくれて構わん」

「そうは言われても、中々、染みついたものは変わりませんよ。なあ、岡」

「全くだな。それにしても短慮をしてしまったかな」

「やってしまった以上は、仕方ないですよ。それにしても、和子様が身内だからとして、ここまで動いてくださったとは、本当に感謝に耐えません。ちゃんと路を調べて、住民と友好関係を築いて、移民先の手配までした下さり、更にこんな幌馬車まで準備して」

「本当にな」

 移民団の指揮官、宇喜多忠家と戸川通安、岡家利はそんな会話を交わしていた。


 1559年春に、オレゴンの大地を踏んだ法華宗徒は、結果的には数万人単位に達した。

 とはいえ、流石に数万人もいきなりミシシッピ川流域まで行くのは、どうにも不可能な話だった。

 幾ら懸命に幌馬車製造等を行ったとはいえ、数万人を運べるだけの幌馬車は準備できていなかったし、それに移民のために必要な物資の蓄積も追いついていなかった。


 こうしたことから、法華宗徒の間で協議が行われた末、備前出身である宇喜多家を中心とする約二千人近い若者が、まずは六百台程の幌馬車でミシシッピ川流域を目指すことになったのだ。

 若い男性ばかりで行けば、現地で戦いになった際に有利であるということもあった。


 また、宇喜多家が中心になった理由だが、備前にいた際に沿岸部の治安維持に当たっており、しばしば武装した倭寇との実戦さえも、宇喜多家はやっていたからだった。

 倭寇と言えども、完全に一枚岩では無い。

 本職は密輸であり、その際に紛争が生じたら、倭寇同士と言えども抗争も辞さない存在なのだ。


(それこそ、昭和30年代の日本の暴力団を想像すれば、この世界の倭寇はかなり近い存在といえよう。

 この頃から暴力団は反社会的勢力とはされていたが、まだまだ日の当たる存在で、昭和34年には山口組三代目の田岡組長が、神戸で一日署長を務めたこともある程で、警察ともなあなあの関係を結んでいた程だった。

 それこそ芸能界や港湾業において、表だって山口組が看板を掲げていられた時代だったのだ)


 こうしたことから、宇喜多家と倭寇の一団とは、取締りの際に武力で戦うことがしばしばだった。

 何しろ倭寇と軽く言うが、火縄銃を持っているのが当たり前だ。

 それに対処するために宇喜多家側も、火縄銃どころか前装式ライフル銃を装備しており、倭寇と白兵戦どころか、銃撃戦を演じたことが度々、という猛者揃いだった。


 こうした実績があったことから、宇喜多家がミシシッピ川流域へ、法華宗徒が植民を行う際の尖兵を務めることになったのだ。

 そして、宇喜多家はミシシッピ川の支流ミズーリ川、史実世界で言えばミズーリ州カンザスシティ市までの経路を踏破して、そこに拠点を築くことに成功したのだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] ちなみにアメリカの穀倉地帯は、ネットで「グレートプレーンズ」「プレーリー」で検索すると出てきます。
2020/12/07 21:41 続々・景気不景気
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