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ちょっと遅れたけど更新、キリが悪かったので短めです。
イオリと別れた私はその後、スキルのレベル上げやステータスを成長させるために魔物と戦ったり、『AL・AZIF』を読んで新たな魔術を覚えたり……まぁ要するに、自分の強化に時間を使いました。
計画の中に戦闘を行う場面はあまりありませんが、何があるか分かりませんからね。計画の最中に突如現れた謎の強敵に襲われる可能性だってゼロではありません。
自身の修行の後は、『北東の森』に向かい、隷属化に置いた盗賊さんたちの様子見をします。
「どう、はかどってるかしら?」
「……何しにきやがった」
ジロリ、と睨んでくる盗賊頭さんをまるっと無視して、彼らに命じていたことがどれくらい進んでいるのかを確認します。
……ふむふむ、まぁ順調といっていいでしょう。盗賊さんたちはきちんと命令に従ってくれたようです。まぁ、逆らったら彼らの首に嵌った『隷属の首輪』の機能が働いて、とっても痛い目に合うんですけどね?
それじゃあ、この調子で頑張るんですよ? と、ものすごく偉そうな態度でそう命じてやれば、盗賊さんたちは『視線で人が殺せたらっ!』とでも言いたげな、こわぁい形相で私を睨んできます。
「チクショウ……! チクショウ……!」
「これさえなければ、お前なんて……!!」
「許さないぞ……!! 絶対にお前を地獄に堕としてやる……!!」
盗賊さんたちは、今すぐにでも殴りかかってきそうな雰囲を醸し出してますが……ざぁんねぇんでしたぁ!
私を害する行為は、直接的、間接的問わず禁止してあります。なので、彼らは私に対してデコピンすらできません!
目の前に仲間を騙し陥れ、裏切りを強要した挙句、肉片に変えた張本人がいるというのに! 復讐どころか恨み事一つ吐けない気分は? ねぇ、どんな感じなのか教えてくださいよぉ?
……え? とっても悪い? 最悪という言葉すら生温いくらい?
ぷっ、あははっ! それはそれは……ざまぁみろっ! こちらの想定通りの反応をどうもありがとうございまぁす!
ふふっ、お猿さんみたいに真っ赤になっちゃってまぁ。もともと不細工な顔が見るに堪えないモノになっていますよ?
そうそう、そうやって憎悪を滾らせなさい。そして、計画の時にそれを爆発させるのです。
盗賊さんたちを煽るだけ煽って、この日は一度ログアウトします。
仮想世界から現実世界に戻った私は、愛用のパソコンを開いてとあるサイトにアクセスしました。
そのサイトの名前は、『神話世界総合掲示板』。
くっそシンプルで分かりやすい名前をしている、『神話世界の探究者』の掲示板サイトです。
『神話世界の探究者』で起こる様々な出来事がプレイヤーたちの手によって書き込まれるこのサイトなら、きっと私の求めている情報も存在しているはずです。
私が調べたいのは、どれだけ聞いてもはぐらかされた、イオリの輝かしい活躍の数々です。あと、《始まりの街の英雄》という称号の由来についても明かしておきましょう。
……え? そんなにイオリのことが気になるのかって? ええ、それはもう。大いに気になっています。
そうは言っても、イオリのファンになっただとか、イオリ様カッコいいーきゃーとか思っているわけではありませんよ? 計画のためです。
今日一日、数時間だけとはいえイオリと一緒にいて、彼という人物のことを少しだけ理解できました。
これは完全に私の主観なのですが……イオリは、善人で、狂人です。
いい人なのは間違ないでしょう。始終からかってばかりだった私に最後まで付いてきてくれたこと。最初に出会った時、ナンパ男に絡まれていた私を助けてくれたことからも、それは分かります。
ですが……始まりの街を――あの世界を歩むイオリは、非常に幸せそうでした。
ここにはこれがあって、ここにはどんな人がいて、どんな暮らしをしているのだとか、いろんなことを、笑顔で語り続けていました。
そして、NPCに対しても、まるで本当の友人であるかのように語り掛けるんです。
それは、ただ『神話世界の探究者』というゲームを好きでいるだけでは到底抱けないであろう感情でした。
彼は、ゲームプレイヤーという枠を超えて、あの世界のことを愛している。その証拠なんだと思います。
そして、これは確証のないただの妄想なのですが……イオリは多分、現実よりも、あの世界を――。
人として、酷く歪なことなのでしょうが……まぁ、私も歪さでいえば似たようなモノですし、そのことについてあれこれ言うつもりはありません。
私が危惧しているのは、私の計画にイオリが乱入してきた時のことです。
始まりの街で騒ぎを起こし、そこに住まうNPCに被害が出ることがほぼ確定しています。そんな場面をあの百花以上にゲーム大好き(ガチ)なイオリが見て、妨害しないはずがありません。
《黒閃の剣帝》なんて二つ名がつけられ、βテスター最強と呼ばれる存在が割り込んできたら、計画に多大な影響が出るでしょう。
そうなった時の為に、彼の実力を把握しておかなければなりません。相対した感じだと、『強い』ということしか分からなかったので……。
あとはまぁ、次会った時にからかうためですね。常に相手の弱みを握って精神的優位を取る。これ、大事です。
「ええと、イオリのページは……っと、ありました。これですね」
見つけたのは、『【ちょっww】《黒閃の剣帝》の軌跡part35【お前主人公じゃんwww】』という記事でした。タイトルェ……。
た、タイトルは兎も角、ざっと見た感じイオリのβテスター時代の活躍について面白おかしく書いてあるようです。
よしよし、ではさっそく見ていきましょう。
読んでくれてありがとうございます。
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