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第九十九話「浮かれちゃダメね」

 


「あたしゃ急いでるから品物はここへ置いとくよ!」


 しゃがれた女の人の声が店の奥から聞こえてきた。


「あれはレイの声だね。フフ、やっと注文の品が届いたみたいだよ?

 今取ってくるからちょっと待ってておくれ?」


 セードルフさんが立ち上がって店の奥へと入っていく。

 ジェズさんが使いに出てから30分くらい経っただろうか。

 待っている間はセードルフさんとフレーバーティーの話に花を咲かせていたので、本当あっという間だった。

 特に今日のお茶に入っているゲラバニハはかなりの収穫。

 なんてったって、ゲラバニハはほぼバニラ。

 実際に見せてもらったんだけど、まさにバニラビーンズなのよ。


 これがあれば大好きなプリンが作れる!


 それにアイスクリームだって、カスタードクリームがたっぷり入ったフルーツタルトだって美味しく作れる!


 まさにスイーツの夢が広がる大収穫!


 ちなみにセードルフさんは見せてくれたゲラバニハをそのまま私にくれたんだ。

 私ってば、ぶっとい字で欲しいって顔に書いてたのかしら……。


 とにかく、明日か明後日にはルークさん達が王都に到着するはずだから、美味しいプリンでお出迎えができる。

 みんなには心配かけてしまったから、少しでもおもてなしがしたい。うん。


 と言う訳で、ギルドへ帰ったら試しに作ってみるつもりなのだ。


 きっとルルも喜ぶだろう。

 もし食欲がなくてもプリンだったらツルっと食べられるはずだしね?

 ルルがプリンを食べた時の顔を想像すると思わずニンマリしてしまう。

 今から凄く楽しみ。


「ほら、広げてごらん?」


 ボフっと私の目の前に風呂敷包みが置かれた。

 あれこれとギルドへ帰ってからの事を考えていたら、いつの間にかセードルフさんが戻って来てたみたい。


「うわぁ〜!」


 風呂敷を広げた私は思わず大きな声を出してしまった。

 だって、中には真っ赤なリボンが四つも入っているんだもん。

 うち一つは見本として預けていた私のリボン。

 それと全く同じ大きさのリボンが二つに、銀一用の小さなリボンが一つ。


「もしかして、私の分まで作ってくれたんですか!?」


「フフ、随分といい顔してくれるねぇ?

 少々痛んでいたから、生地が余ったら同じ物を作っておくよう頼んどいたんだよ?

 いやなに、手間賃はウチで持つから遠慮なく受け取っておくれ」


 なんて気の利く人なんだろう。

 セードルフさんが神に見える。


「ありがとうございます!

 でも、本当にいいんですか?

「いいんだよ。その代わりこれからもウチの店を贔屓にしておくれ?」


 流石商売人。

 でも正直言って、ほぼ軍物屋さんを贔屓にするとは思えないよ……。


「やっぱり私の分はちゃんとお支払いします……」

「だからいいっていいって……。

 そうだ。だったら、そのリボンをしたところを見せておくれ?

 眼福料って事でお代をチャラにしよう。フフフ」


 妙案が浮かんだとばかりに、セードルフさんが手を打ちながら声を弾ませる。

 確かに私の魔◯宅ルックはかなり可愛い。

 でもお金が取れるほどではないのも確か。


 本当にいいのかな……?


 と、私が躊躇っていると、


「ここの試着室に鏡があるから早く見せておくれ」


 セードルフさんに背中を押されて、部屋の隅の扉の前に連れて行かれた。

 部屋の対面の隅ではだらしなく涎を垂らした銀一が、フガフガ鼻を鳴らしてゴロゴロしている……。


「じゃあコレね。それは預かっておくよ?」

「あ、はい。ありがとうございます」


 リボンと引き換えに斜めがけしていたバッグを渡す。


 そう言えばレムのリボンがないわよね……。


 バッグを渡しながら、寂しそうにピコピコするレムが脳裏に浮かんだ。

 ま、レムがリボンなんてしてたら、大きくなる度にビリビリに破れちゃうわよね?


 きっとレムの方から辞退するわよね…………?


 そう言うことにしておこう。うん。

 ピコピコと寂しそうなレムの映像をシャットアウトする。

 それでも欲しそうだったら私のお古をあげよう。うん。


「じゃあ、ちょっと失礼しますね……」


 私はリボンを手に試着室へと入る。

 えへ、なんだかんだ言って楽しい。

 ガチャリとノブを回して中へ入る。


「……ッ!!」


 入った途端、思わず息を呑んでしまう。

 試着室の中に凄く可愛い女の子が立っていたのだ。


 って、鏡に映った私か。えへへ……。


 なんて、ついつい浮かれてしまう。


「……って、こんな感じかな……?」


 鼻歌まじりでリボンを装着。

 自分で言うのもなんだけど、ちょう可愛い。


「そうだ、出て来るついでに中に掛かってるマントを持って来ておくれ?」


 セードルフさんの声。

 確かに臙脂えんじ色のマントが鏡の横に掛かっている。


「はい、わかりました!」


 マントを手に取った途端、ガチャリとマントが掛かっていたフックが上がり、試着室の中がボワッと青白い光に包まれた。


 足下を見ると青白い光を放った丸い魔法陣。

 大きさや色は違うけど、迷宮へ転移してしまった時のそれに似ている。


 なんでこんな所に……?


「フフフ、眼福料の支払いはもう少し後になりそうだね?」


 セードルフさんの声とともに私の視界が暗転した。


がんばって更新スピードあげるぞっ!(•_•;;

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