第九十一話「ここにも忍者が……」
書いていたものや資料のデータが消えてしまい更新が遅れました。m(_ _)m
思い出しつつ書きましたが更に話が前に進まない不思議。
とにかく資料が消えたのが痛い……。
ま、ぼちぼち書いて行きますのでよろしくお願いします。
重っ……。
テオくん、流石に26個のラハンナは重いよ……。
しかも時間が経つにつれ、この袋のボコボコの正体が鉛玉に見えてくるくらい、ずっしりと重たくなってるのよね。
この袋の中身って本当にラハンナなのかしら?
もしかして砲丸? これってテオくんの作戦??
いやいや、それはないわよね……。
でも、こんな被害妄想を抱いてしまうくらい重いんだよね……。
この5分ほどで2回持ち直したけど、やっぱり袋を置いて休憩しなきゃ手が保たない。
とりあえず休もう。うん。
「ねえ、イオン。そんなに重いんだったらバッグの中に入れちゃえば?」
「ッ!!」
銀一、あんた天才だよ!
そうよ。このバッグは中へ入れると重さがメチャ軽減されるんだった。
しかも腐りにくくもなるんだよね。ちょう便利バッグ。
てか銀一、もっと早く教えてくれれば……って、私がこのバッグの不思議機能を忘れてるのがいけないのか……。
とにかく砲丸をバッグに入れよう。うん。
「ッ!!」
ルンルンでバッグを開けたらピコピコのレムと目があった。
流石にこの中へラハンナを詰め込むのは可哀想よね……。
「レム、ダイ、ジョブ、ラハ、ンナ、イッ、ショ、モン、ダイ、ナイ……」
バツの悪い思いが顔に出ていたのか、レムはそう言ってピコピコと私を見上げてくる。
銀一の声が聞こえてたみたい。
「やっぱり手で持っていくわ……」
やっぱりレムがラハンナでぎゅっぎゅーになるのは可哀想だもん。
「レムもいいって言ってるんだしバッグに入れちゃいなよ?
こんな調子で休んでたらギルドに着く頃には日が暮れちゃうよ?」
「…………」
それはマズイ。
ブライトンさんに断りなく出てきてしまった手前、なるべく早く帰りたい。
「レム、ダイ、ジョブ、ラハ、ンナ、イッ、ショ、モン、ダイ、ナイ……」
ピコピコと同じ言葉を繰り返すレム。
申し訳ないけど、ここはレムに甘えよう。うん。
「ごめんねレム。早く帰らなきゃだし入れさせてもらうわね?」
「イオ、ン、キニ、シナ、イ、レム、ダイ、ジョブ……」
レムはそう言いながらバッグの隅っこへ移動してくれる。
「ごめんね、レム……」
もう一度謝りつつ、お言葉に甘えてラハンナ投入。
赤い雪崩のようにラハンナがレムを襲い、あっという間にレムの姿が見えなくなった……。
「だ、大丈夫レム?」
「レム、ダイ、ジョブ、イオ、ン、キニ、シナ、イ……ケイ、ゴ、モン、ダイ、ナイ……」
レムがラハンナの間からピコピコと這い出してきた。
こんな状況でも私の警護を忘れていないみたい。
ありがたい限りだよ。
てか、一度レムを出してからラハンナを入れれば良かった?
なんか心底申し訳ない……。
「偉いぞレム! そうやって、いつでも飛び出せるようにしとくんだぞ!」
「ハイ、ギギ、レム、イツ、デモ、ダイ、ジョブ……」
銀一の言葉にレムが手を胸に当ててピコピコ軽く頭を下げる。
「狭くなっちゃったけど、よろしくね、レム」
「ハイ、レム、イオ、ン、ケイ、ゴ、スル、ダイ、ジョブ……」
銀一にレム。こんな可愛らしくも頼もしいボディーガードは他にはいないだろう。
「ふふ、心強いわ。ありがとね。じゃあ出発するから被せるわね?」
私は申し訳なく思いながらも、バッグのかぶせをレムの上にそっとのせる。
レムはかぶせで見えなくなるまでピコピコ手を振っていた。
私はレムとラハンナが入ったバッグを斜めがけにして立ち上がる。
うん、軽い。抜群に軽い。
これなら問題なく歩ける。
まあバッグはラハンナを26個も入れたせいで少し大きくなったけどね。
このバッグ、重さが軽減されるだけでなく、伸び縮みして容量もびっくりするくらい入るのよ。
本当に不思議な便利バッグ。
ま、お高いだけのことはあるわよね。
本当、ルークさんには感謝しなきゃ。
「ギギ、ルル、行くわよ」
身軽になった私は二人に声をかけて歩き出した。
「イオン、何かあった時には我がレムより速く動くから安心していいぞ?
そういう訳だからレムの出る幕はないな?」
私の手を握りながら誇らしげに胸を張るルル。
下手にルルが動くと大惨事になりそうで逆に怖い……。
「よく言うよ、レムの張り手を躱せなかったのは誰だったっけ?」
「ぐぬっ……アレは油断してただけだぞっ!」
「ボクにも追いつけないのに?」
「ぐぬぬっ……」
私の手を振り払い銀一に飛びつくルル。
難なく躱す銀一。まるで瞬間移動したかのよう。
ここにも忍者がいたか……。
「ぐぐっ、魔力を使うとは卑怯だぞっ! くっ、我の本気を見せてやるっ!」
「待ちなさ……」
止めようにも既にルルの姿がなかった。
銀一が逃げた方を見ると、人混みの中をジグザグに瞬間移動を繰り返す銀一とルル。
なにやってんだか……。
「おいおい、あのホーバキャット見てみろよ?
あれ、きっと上位種だぜ? 俺、初めて上位種見たわぁ」
「そ、それよりホーバキャットを追ってるあの小さな女の子の方がすげぇぞ?」
「おお、気づかなかった。本当だな……。
着てるもんからして貴族の子には見えねぇが、上位種のホーバキャットについてけるなんて大した魔力量だよなぁ」
「お前、感心してる場合じゃねぇぞ?
あれが衛兵にでも見つかったら、あの子、有無も言わさず囚われちまうぜ?」
「ああ、確かにありゃ6、7歳の魔力量じゃねぇな? ハハッ、本当に魔王並みの魔力量だったりしてな?」
「笑いごとじゃねぇぞ、一度でも魔王と疑われたら一生監視されるって話なんだぜ?
あんな小さな子が可哀想じゃねぇか……」
「そうだな……」
「平民は控えめに魔力を使わねぇとややこしくなるのは常識なのに、あの子の親はどういう教育してたんだろうな?」
「確かに親も親だな? あれが男で将来仕官させたいんならまだしも、可愛らしい女の子だもんな……」
私のすぐ後ろで銀一とルルの話しをしている男の人の声が聞こえてきた。
思わず振り向くと、二人はバツが悪そうな顔をしてそそくさと歩きだした。
私がルルとほぼお揃いのワンピに黒髪ってことで、親とは思わないまでも家族だと判断されたのだろう。
「ッ!!」
男の人たちが歩きだした向こうに、例のイケメン忍者が一瞬見えた。
男の人たちの陰にいたみたい。
今はもう影も形もないけど絶対にいた。
こう何度も続くと流石に薄気味悪いわよね……。
なんなのよ……。
人攫い?
よくよく考えるとあのイケメン具合、ダビアンヨカリのマッドさんを彷彿させる。
マッドさんが空賊なことを考えたら、あのイケメン忍者は盗賊なのかも知れない。
そうよ。あのイケ忍、もしかしたらテオくんのお父さんを殺した盗賊の一味かも知れない。
あんな顔してて、きっと平気で人を殺すんだわ……。
「怖っ……」
イケメン忍者がいた空間を見ながらブルリと身震いしてしまう。
一瞬にして恐ろしくなった私は、銀一とルルを追うように走りだした。




