29話 パレ・リブッカーといっしょに!①
<パレ・リブッカー>
「さあいくぞ。ノルマをこなすのが大変だからな」
観光にノルマ?
<パレ・リブッカー>
「王都は全部で六つの層に分かれていて、下から交易層、生産層、住宅層、娯楽層、学問層、そして最上に王城がある」
手から王都のホログラムを出して説明している。
筒が縦になった構造の王都は100kmごとに区画が分かれており、それぞれの層に様々な役割があるようだ。王城だけはぼかされて見れなかったが。
<パレ・リブッカー>
「今から私達は一週間以内に六層全てを見て回らなければならない」
単純計算すれば100km×100km×3.14だから大体一層3万k㎡。
※東京都約14個分です。
思わず見上げてしまった……ってここは側面に重力があるから意味ないんだっけ。前を見て街の状況を見る。
また壁だった。でも今度は黒い壁。
見上げても幾何学模様の入った壁が遥か彼方まで続いている。
唖然とする僕をよそに他の人達は黒い壁の入り口に次々と入っていった。
<パレ・リブッカー>
「ここは第一層、交易港ウェズカーク。説明はシャトレがやったから割愛する」
そう言うと、奴は入り口に向かわず右の方へと歩いていった。
僕はまだこいつとの距離感が分からない。
許すつもりは毛頭ない。ここの景色は少ししか見てないけど、豊かな暮らしをしているのはなんとなく伝わる。モリタミのみんなを殺しておいて。
でも心の隅でこの街を、世界を知りたいと叫んでいる声がする。
だからこいつと会話をしない訳にもいかないよなぁ。
しかしこの拘束具、いつのまにか手足が動かせるようになったが全く見えない。なのに実際には引っ張られてるんだよな。屈辱感が半端ない。
——————
静かな室内。二人とも黙り込み斜め上を見上げたいる。
この部屋は前に大きな扉があって両側に押しボタンが付いている。わずかな振動と加速度的に上昇していくこの部屋は言うまでもない、これは、
<シリウス>
「………このエレベーターどこに向かってるんだ………ですか?」
<パレ・リブッカー>
「第一の目的地だそうだ」
奴がホログラムを展開するとご丁寧に冊子の形をしたパンフレットが現れた。カラーリングや絵が簡略化されててちょっと絵本っぽいし。
<パレ・リブッカー>
「今回のアイシール観光にあたって我らが王が製作したアイシール周遊パンフレットだ。ここに到着したらすぐ送られてきた」
この世界の支配者だとアスカさん達から聞いていたけど意外とノリノリな王なのか?
<パレ・リブッカー>
「ここはウェズカークでも有数の名所、タワー スターズ。ここはいいぞ、首都の街が一望できるスポットだ」
それにしてもこのエレベータかなり長い。
上の標識には何階とは書いておらず、標高20km、30、40と上がっているのが分かった。
50kmの地点でエレベータは止まり、聞き慣れたチン、という音が鳴る。
<パレ・リブッカー>
「着いたな、展望台だ」
ドアが開き目の前にはガラス張りの風景が飛び込んできた。
<パレ・リブッカー>
「ここはアイシールの中心点。ここなら全周を一望できる。いい眺めだろう」
景色の端々が湾曲していて本当に筒だったんだと実感した。宇宙飛行士達も地球を見た時に同じような事を思ったんじゃないかな。遥か下には極小粒の建物達が所狭しと並んでいて、更に小さな無数の点が規則正しく縦に横にと動いていた。
景色の奥を見ると、階層ごとの切れ目が赤く光っていて、三層の端まで見ることが出来た。地形の変化が無い分、それぞれの層の建物が少し違うみたいで、一層目は四角い建物が多く、二層目はなんかごちゃごちゃしてるっぽい。三層目は形が殆どわからないけど一層目よりぎっしりしているような気がする。
<シリウス>
「不思議な感じ………真横にも建物があるのに落ちてこないなんて、それに雲も………」
スペースコロニーをイメージしてたからもっと無機質な感じだと思ってたけど、なんとここには青い空があった。上を見上げると反対側の街が薄い影として空に映ってるし、雲がゆったりと流れているのが見える。下にも白い雲が連なるように漂っているし、一層の奥の方には黒い雲が佇んでいた。
<パレ・リブッカー>
「おっ、後でこっちも雨が降るかもな」
<シリウス>
「ここは閉じてるのに天候なんてあるんd…ですね」
構造上太陽は外側にある筈なのに、まるで太陽に照らされたかのように影があるし、風の吹く音がガラス越しに聞こえてきた。
<パレ・リブッカー>
「そうだ。夕方になれば空は赤くなるし、夜になれば暗くなる。風も吹くし雨も降る。星は見えんが、ビルの灯りが星代わりだ。これが第五層まで続いている。本来ここで生活するなら要らない筈なんだけどな、よほど物好きな魔術師がいたのだろう」
<シリウス>
「外壁に重力場があるのも、空があるのも魔術なn…なんですか?」
<パレ・リブッカー>
「さっきから気を使っているみたいだが、敬語で喋る必要はないぞ」
<シリウス>
「あっそう」
<パレ・リブッカー>
「お前の言った魔術の類というのは当たっているんだが、少し違う。元魔法使いに教わらなかったか?魔術史におけるブレイクスルー、ここAICL、いや、レヴィリオンの街、生活、文明、この世界のありとあらゆる全ての発展に貢献した魔術———力学魔術を」
次回は11/29となります!




