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柘榴の如く甘美な雫

『親愛なるララスティ姉君


 こうして手紙を出すのも久しぶりかな?

 前に話していた通り、こっちも婚約だとかで忙しくしていたんだ。

 そちらは変わりない?


 今後、この国を先導する者としての自覚をより持つようにって、言われてるんだけど、なんだかこそばゆいよね。

 王太子妃になるララスティ姉君ならわかってくれるかな?

 今のうちに自由な時間を確保しておこうと思って、ちょっと悪だくみをしたいんだ。

 そ れ は、なーんと! アンソニアン王国に定期的に遊びに行くことだよ!

 名目は、まあ……植生の確認とかそういう系で!

 ほら、あの伝染病の特効薬に使う生薬が、そっちの国では本当に育たないか確認する必要もあるだろう?

 そういうのをまとめて調べに行く感じでさ!

 それについて、事前に直接こっそりそっちに行って話したいんだ。

 秋ごろとか時間は取れる?

 返事を待ってるよ。


                    貴女の幼き騎士 クルルシュより』


 何度も手紙を交わしているからか、当初よりずいぶん砕けた口調で書かれるようになった、クルルシュからの手紙。

 帝国まで自分の計画に巻き込むつもりはないララスティは、あくまでも又従姉弟として接していたが、あちらは前回と違いララスティに興味を持ったようだ。

 だが、とララスティは困ってしまう。


(時間が取れるって、こっそりこちらに来た時にわたくしに会うと言う事ですわよね?)


 前回一度も会ったことのないククルシュにどう接していいのかわからない。

 もちろん、又従姉弟として歓迎する気持ちはあるが、どのように接するべきなのだろうか。

 こっそり、とあるので公けな歓待はできないし、かといってぞんざいにも扱えない。


(カイル殿下に相談……いえ、帝国のことですからルドルフ様に相談ですわね)


 ララスティはそう考えると、早速ルドルフ宛てに手紙を送った。

 その手紙に、この件について話し合うため、明後日、アインバッハ公爵家で落ち合う約束となった。


 二日後、ララスティはいつも通りアインバッハ公爵家に到着し、偶然にも(・・・・)用事で訪問していたルドルフと会う。


「ごきげんよう、ルドルフ様」

「やあ、ララスティ」


 にこにことあいさつを交わしながら、二人で応接室に向かう。

 もちろんルドルフの用事と言うのは建前なのでもう済んでいるし、今からララスティがもてなすという建前を作るためだ。

 応接室に到着し、対面のソファーにそれぞれ腰かけると、メイドがお茶を淹れて壁際に下がる。


「それで、帝国のクルルシュ殿下が来るって?」

「はい。お手紙ではそのように書かれておりました。今後、植生について定期的にこちらを訪問し、調べたいとありました。前回ではそのようなことがありませんでしたので、どうしたらいいのかと」


 困ったように話すララスティにルドルフは「ふむ」と息を吐く。


「確かに、前回クルルシュ殿下はララスティの事故前は絡んでこなかったね。絡んできたのは君の事故後だ」

「事故後になにかあったのですか?」

「君の扱いについて、帝国にも話をしたからね」

「え?」


 ルドルフは前回のことをララスティに説明した。

 ララスティの事故後、怪我を直すにあたり帝国の技術を借りたらしい。

 その際にララスティの置かれていた状況を説明する必要があり、だれよりも憤慨したのがクルルシュだったという。


「彼は、以前から君の置かれていた状態を気にかけていたそうなんだけど、もっと早くに手を出しておけばって悔しがっていたよ」

「そうだったんですのね」


 ララスティはしんみりとしながらも、クルルシュの思いやりを嬉しく感じてしまう。

 ルドルフは他にもクルルシュとは色々やり取りをしていたし、なんだったらララスティとの間に生まれた第一子の妻はクルルシュの娘だった。

 巻き戻りの魔道具探しにも協力してもらったし、なんだったら前回の繋がりはかなり深い方だった。

 だが、ララスティが言うように、事故の前にクルルシュがこちら側に直接接触してきたことはない。

 様子を見るための密偵は入っていたようだが、そんなものはご愛嬌で済まされる。

 この時期に接触してくるとは、帝国に何か起きたのかもしれないが、ルドルフのところにはそのような情報は入っていない。


「まあ、相手の出方を見るためにも、会ってみるのはいいと思うよ。ただし、一人で会うのはお勧めしない」

「そうですわね。けれども秘密裏にとありますし……どうすれば?」


 ララスティにルドルフは、外交面を担っているシングウッド公爵家を使用してはどうかと提案する。


「それは、つまり……」

「私も立ち会うということだね。場所は、ここでいいんじゃないかな?」


 ルドルフはそう言って微笑むとカップを取ってのどを潤す。

 しかし、内心ではかなり焦りを感じていた。

 この時点でクルルシュが関わってくるなど、本当に想定外なのだ。

 平静を装ってはいるが、今もクルルシュがどのように動くのか、必死でパターンを考えている。


「では、そのようにお手紙を書きますわ」

「うん」


 日程調整はクルルシュに合わせると言うルドルフに、ララスティは安心したように息を吐いた。

 ララスティもお茶を飲むと、「そういえば」とルドルフを見る。


「エミリアさんの噂は王宮ではどのぐらい広まっているのでしょうか?」

「もちろん良い噂はないね。ほら、春のパーティーで遅れて会場に入ったことがあっただろう?」

「はい、その件は聞いておりますわ」

「その時に彼女を案内したメイドが随分不快な思いをしたようで、普段は愚痴を言わないのに珍しく愚痴ったと噂が広まったんだ」


 ルドルフの言葉にララスティは「なるほど」と呟いた。

 王宮のメイドは基本的にまじめで愚痴をこぼさない。

 それは王宮で働いていること自体が名誉なことであり、誇りに思っているからだ。

 だからこそ愚痴を言ったという行為が珍しかったのだろう。


「カイル殿下のエミリアさんに対する態度は、以前よりも少しだけ柔らかくなりましたが、まだまだ壁がありそうですわ」

「今はそれでいいさ、きっかけは作ったのだしね」


 ルドルフはそう言って笑う。

 正直なところ、ルドルフは前回のカイルとエミリアの真実の愛は、思い込みの産物だと考えている。

 正義感によって弱者を守った自分に酔ったカイル。

 恋とララスティに当たられる気の毒な自分に酔ったエミリア。

 ララスティという障害と、ハルトからの反対という燃料があったからこそ盛り上がった。

 ただ、責任感が強いカイルだったからこそ、最後までエミリアを大切にしていただけだ。

 ハルトはララスティが事故死したと知った瞬間、カイルを廃嫡しようとしたが、ルドルフがそれをとめた。

 医者に見せてララスティの身体機能に問題はないとわかっていたため、自分とララスティの子供をカイルの養子にさせようと計画していたから。

 そこまで思い出してから、ルドルフは不意に話題を少しだけ変えることにした。


「きっかけは作ったけれど、ララスティはあの二人が真実の愛で結ばれなかったらどうするつもりだい?」

「え?」

「いや、君は真実の愛を確かめたいと動いているけど、それが叶わなかった時の話をしないから、どうなのかなって思ってね」


 ルドルフの言葉にララスティはきょとんとした後、「えっと」と戸惑いの声を漏らした。


(だって、真実の愛ならどんな状況でも結ばれるでしょう)


 そうでなければ前回の自分が報われない。

 ララスティはそう考えて行動してきたため、二人が結ばれなかった時のことを考えていなかった。

 しかし、ルドルフの言う通り結ばれない可能性だってある。


(そうなったら、わたくしは……)


 前回、婚約破棄をされたのはララスティが愚かだったからだけだと言う事になってしまう。

 そう考えると、自分の情けなさに思わず涙が出そうになる。


「もっとも、前回もだけれど、今回もすでにララスティはカイルたちに勝利している(・・・・・・)んだけどね」

「え?」

「だって、兄上も父上も、カイルの血に価値を求めていない。まあ、王太子の仕事をすればいいぐらいには考えているかな」


 ルドルフの言葉にララスティは眉を寄せてしまう。

 今聞いたことをそのまま整理してしまえば、それはつまり……。


「まるで、カイル殿下に王族の血が流れていないようなことをおっしゃいますのね?」

「そう言っているんだよ」

「っ!?」


 あっさりと認めたルドルフにララスティは息を飲んでしまう。


「ほ、本当に?」


 思わず小声になるララスティにルドルフは頷く。


「兄上は君も前回聞いたと思うけど男性不妊になって、もう子供は望めない。だから、私か君の子供が望まれている」

「な、なるほど……」


 とんでもないことを聞いてしまった、とララスティは若干青ざめ、気持ちを落ち着かせるために紅茶を一口飲む。


「では、もしカイル殿下とエミリアさんが結ばれたら……」

「悲しい事だね」


 どうなるとは言わないルドルフの言葉に、ララスティは肩を震わせてしまう。


(ああ、なんて、なんて———)


 喜 劇 的 な の だ ろ う 。


知っちゃった知っちゃった!

ルティも秘密を知っちゃった!( *´艸`)


カイルの執務能力は評価されても、血筋は興味持たれてない!

悲しいね(喜)


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ルドルフがルドルフについて言ってるけど多分名前ミス?
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