6ブラッドアイウルフ
バチバチと何かを焼いているかのような音がする。
いい匂いだ。何か肉でもやいているような……。
ゆっくり目を開けると洞窟の天井に大きな切れ間があり、そこから白い満月が顔を覗かせている。
そこでハッとする。
あの狼はどうなったのだろうか。
体の上半身をムクッと起こす。
どうやら気を失って眠っていたらしい。
体には黒色のコートが上からかけられていた。
一体誰のだろうか。
ボンヤリとした状態を少しずつ覚醒させると目の前には焚き火の近くで座り込む男の背中が見えた。
「目が覚めたか」
男は気配に気づいたのか背中ごしに話しかけてきた。
「一応癒しの光はかけたが、気力は回復しない。無理はするな」
ケリュリア?回復魔法のことだろうか。
確かに狼につけられた傷が完治していた。
この男が助けてくれたらしい。
ただ背中ごしの重圧を感じてちょっと恐い。
「えっと。あの狼はどうなったんですか。」
言葉に反応して男が振り返る。
銀髪の鼻筋の整った顔立ちで琥珀色の眼をした【まさに異世界人】の顔だった。
首元には赤い宝石のついたシルバーのネックレスをつけている。
「ブラッドアイウルフのことか。倒したから安心しろ」
鋭い目つきにビクッとして焚き火の方に目を向ける。
長い棒の串に刺さった肉が焚き火の火で焼かれていた。
「もしかしてそのお肉があの狼ですか」
男も焚き火に目を向ける。
「あぁ。下処理は済ませてある。ちょうど焼けた頃だな。気力回復のためにも喰え」
男は立ち上がると串肉を手にとって差し出してきた。
というか上下とも黒色の服を男が着ているため、死神が鎌をコチラに向けているようでやっぱり恐い。
「もしかして肉は苦手か」
少し躊躇していると訝しげな表情をしてきた。
「いや大好きです!いただきます」
助けてくれた男を恐がるのは失礼だと思い。急いで串肉を受け取ってかぶりつく。
「どうだ」
う……。うまいっ。パリッとした皮の先にジュワと口の中に広がる肉汁。味付けはされてないはずなのに香ばしく優しく甘い。食べすすめれば食べすすめるほど旨味がより強くなる。何だこれは!何だこれは!もう止まらない!
お腹が空いていたこともあり数秒で食べてしまった。
あぁ本当にうまい!
「うまいです!何だか甘味もあって最高です!」
俺の食べる姿を見て男はどこか優しい顔をする。
「ブラッドアイウルフはハニーラビットを好んで食べる。だからこそ甘味が出て美味しいんだ。食べたことなかったのか」
「はい!はじめて食べましたっ!」
「まぁブラッドアイウルフの危険度は5で市場には中々出回らないからな。まだ肉はあるからよければ食べるか」
「お願いします!」
「じゃあよければこっちにこい。焚き火にあたりながら食べれば体も温まる」
男は焚き火の方に俺を誘導する。
コートをかけてくれたことにお礼を言って返すと焚き火の方に向かった。




