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4翡翠色のペンダント


一瞬の出来事だった。光が消えると自分の状態が変化していることに気がついた。


「なんじゃこりゃ!」


この空間に飛ばされた時はブレザータイプの学生服を着ていたのだが、何の特徴もない無地の布の服になっていた。そして履いていた学生靴は素材がチープな革の靴に変わっている。勇者装備というよりも村人装備。唯一勇者らしいのは、指にいつの間にかはめられた金色の指輪くらいである。あっ!あと白い無地のハンカチも何故か持ってました。ハンカチは外出するときは必需品だよね…。ごめんなさい。これまた意味不明です。


「その姿は…成功みたいね」


フロディーさん。あなたは頭がおかしいのだろうか?どこをどう見たら成功なんだろうか?


「おいっ!フロディーさんよ!この姿を見てみろよ!成功のせの字もない姿じゃないか!」


あまりにも酷すぎるので強く反論した。


「そう思うのも仕方ないかもしれないけれど…似合っているわよ」


失敗を棚に上げてお世辞を言い出した。

この女神は本当に駄目かもしれない。

金色の指輪は高価そうだし、最悪能力がなくても金策アイテムにはなりそうなので百歩譲るとしても他の装備に強い能力があるとは微塵も感じられない。

こんな装備でどうすればいいのか。

もはや、やる気は0以下のマイナスだった。


「元の世界に返してください」


もうね、色々無理です。


「ごめんなさい。出来ないわ」


「じゃあココにいます」


「存在が消えてしまうかもしれないけれどそれでもいい?」


何この理不尽。遠回りの嫌がらせかな。


「えっと。儀式をやり直したいです」


「儀式は一度きりなのよ。そもそも仮にやり直せたとしても内包された力に変化はないから結果は変わらないわ」


じゃあ俺の内包された力は村人で少し綺麗好きな守銭奴パワーってことですか。


「フロディーの嘘つき!嘘つき女神!」


フロディーは何故か沈黙状態になり、反論をしない。

これはあまりにも酷い装備だと認めている何よりの証拠だった。

もう何だかここまで酷いと何もかもどうでもよくなってきた。


「よし!もうわかった。勇者転移します!」


もはやヤケクソだ。ただ勝算はあった。それは高価そうな指輪だ。指輪に能力があれば良し。もしも能力が無くても、売って稼いだお金で装備を買う。どうせ元の世界に帰れず、この場所にいても消えてしまうのであれば小さくとも何とかなる可能性に賭けてみよう。


「わかったわ。ただ転移する前にコレを受け取って」


フロディーが異空間から何かを取り出す。

それは翡翠色で菱形のペンダントだった。


「そのペンダントを身に着けておけば一度だけ死ぬ可能性のある攻撃から守ってくれるわ」


フロディーは、そのペンダントを首にかけてくれた。


「本当は女神が転生者や転移者に個人的なプレゼントはご法度なんだけれど、色々迷惑かけたからね」


フロディーは切なそうな顔でそう言った。

やはり装備が悪いとわかっていたのか。

お詫びの品は勿論いただく。


「ありがとうな」


「ふふっ。どういたしまして」


フロディーは優しく笑う。

どんなに変な一面を見せても、笑顔一つで許す気にさせるところは、まがりなりにも女神なのだなと思ってしまった。


「さて、今から転移する異世界では邪悪な存在が復活しようとしています。その邪悪な存在から世界を救ってください。健闘を祈ります」


急に笑顔からキリッとした凛々しい顔つきになると、凄く女神らしいことを言い放った。少しだけ台本があるのではないかと疑ったが、せっかく雰囲気が良いので野暮な詮索はやめて、力いっぱい返事をした。


「任せろ!」


その発言後、俺の意識は何かに強く引っ張られた。

フロディーが何か呟いたが聞き取ることは出来なかった。


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