39外階段
夕食を食べ終えると両手を合わせて「ごちそうさま」をする。ガルラも不器用ながら一緒にやってくれた。
その後、アニカさんに片付けの手伝いを頼まれてカウンターの奥に行ってしまった。俺もガルラについて行けばよかったのに、完全に機会を見失った。
どうしよう手持ち無沙汰だ⋯⋯。
そうだ部屋に行ってみよう。
たしか⋯二階の奥の部屋だったな。
俺は折り返し階段を上る。上った先は廊下だった。
いくつかのドア前を通り過ぎて自分の部屋に向かう。
一番奥まで無事に到着。この先にもドアはあったが、開けてみると外階段だったため、この場所で間違いないだろう。
いざ、部屋オープン!
レバーのようなドアノブを下に押して開けようとする。しかし、鉄を軽く叩くような音はしたが、ドアを開けることは出来なかった。ここでアニカさんから鍵を受け取ったことを思い出す。しかし、鍵はどこにもなかった。
ん?俺、鍵を受け取った後どこにしまったっけ⋯⋯。その後すぐガルラの部屋に行ったよな⋯⋯。そこで着替えたから⋯⋯⋯。あっ!もしかして⋯⋯。
もしかすると着替える前に着てた服のポケットに、無意識に入れたかもしれない。
真相を確かめるためUターンをする。
せっかく上ったのに、また下りるハメになるとは⋯⋯。ただ、自分が悪いので仕方がない。
「はぁ」とため息をついて廊下を歩いていると、目の前のドアが開く。青髪の男が部屋から出てきた。
顔が赤い。部屋でも飲んでいたのだろうか。アルコール臭は全く抜けていなかった。
「ん〜?何だガルラと一緒にいたボウズじゃねぇか」
「確かジャックさんでしたっけ?こんばんは」
「何で俺の名前を知ってやがる?⋯あぁレイナスが名前を呼んでたからか⋯⋯」
酔っ払っても理解力はあるらしい。
ジャックさんは投げやり気味に挨拶を返すと、外階段の方に向かおうとしていた。
「あのぉ。そっちは外階段ですけど⋯⋯」
「うるせぇな。んなことはわかってるよ。室内は禁煙なんだよ。そっちに喫煙所があるんだ」
親切心で言ったのに怒られてしまった。
しかし、異世界なのに禁煙なんてルールがしっかりしているな。
「用事ないなら、もういいかい?」
ジャックさんはイライラしている様子だった。
ただ、用事と聞いてガルラのことが脳裏に浮かんだ。
「あの少し聞いてもいいですか?」
「何だよ?」
「ガルラとアニカさんの囚われた過去って何ですか?」
考えないようにしても結局モヤモヤした気持ちは続いている。これはエゴだけれど、気持ちを晴らすためにどうしても聞きたかった。
「⋯⋯ボウズ。しゃあねぇなぁ。じゃあ外階段までついてきな。一服が終わるまででいいなら、話をしてやるよ」
ぶっきらぼうな態度だったが、話はしてくれるらしい。




