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32魔力変換装置


ドワーフさんは指輪を持って唸っている。

しばらくするとドワーフさんはコチラにやってきた。

肩を落として、ひどく落胆しているようだった。


「すまん。魔力を流し込もうとしたんだが何かに弾かれてうまくいかん⋯。もしかすると特定の魔力波長じゃないと効果を発揮しないのかもしれん」


「特定の魔力波長なんてあるんですか?」


「あぁ。基本的に魔力波長は人によって違うんだ。魔力放出の角度とか魔力の動きとかな。まぁこの指輪はどっかの誰かさんの魔力波長に合わせて作られているんだろう。残念ながらお手上げだ」


魔力波長か⋯。指紋のようなものなのかもしれない。


「それってさ、アラタが持っていたんだよな?ならアラタの魔力で効果を発動できるんじゃないか?」


ガルラが何気なく話す。

するとドワーフさんがギラリと俺を見た。


「そうだな!ガルラの言う通りだ!何で今までその考えを失念しておったのだろうな!持ち主がアラタならアラタの魔力に調整してある可能性は高い!!」


何ですと!俺に魔力だと⋯!そんなものはありません。前の世界では一般の高校生で魔法なんて使ったこともないです!!


「アラタ!指輪は返すから魔力を込めてみてくれないか!?」


「ちょ⋯ちょっと待ってください!俺、魔力なんて持ってないですよ。無理ですって!!」


俺の発言を聞くとドワーフさんとガルラでお互い顔を見合わせる。一体何なんだ⋯?


「なぁアラタ。この世界に生まれた人族を含める全ての生命を持つものは多かれ少なかれ魔力を持っているものなんだぜ⋯」


「記憶喪失でそこまで忘れてしまったのか⋯。大丈夫だ。大丈夫だぞアラタ⋯!」


なぜか2人に同情の眼差しを向けられる。

もうこの2人には全て説明をしてしまおうか。


「何とかして魔力の感覚を思い出せればいいんだがな⋯⋯そうだ!少し待っておれ!」


ドワーフさんが走ってドアに向かう。

その後、虹色の石が間につけられたケーブルのような物を持って帰ってきた。


「これはワシが開発したマジックアイテム!魔力変換装置だ!!本来なら魔力の波長は人それぞれ違う。だが!この装置は伝達した魔力を変換させて、他者に魔力を送ることを可能にしたものだ。元々は魔力づまりを起こした患者に、他者の魔力を流して治療する目的だが、魔力の感覚を思い出すには、うってつけだと思ってな」


「おぉ!さすがドワーフさん!よかったなアラタ!」


まずい!まずい!非常にまずい!

でもこの熱量は断りにくい⋯⋯!!


「ほれっ。アラタはこっちを握ってくれ。ワシは反対側を持ってアラタに魔力を送るからな」


ドワーフさんに渡されて、断る前につい受け取ってしまった⋯。まぁ失敗したら本当のことを打ち明けよう。この2人なら大丈夫な気がする。ただ、ガルラには嘘をついたことで失望されるかもしれない。⋯いや。嘘をつき続けるのも疲れた。洗いざらい話してしまおう。


「それじゃあ行くぞ!」


ドワーフさんが声を出すと間の虹色の石が光り始める。

そう思った刹那(せつな)、全身を強い力で殴りつけられたような衝撃が全身に走る。


「んぁっ!あぁっ!はあぁぁあああ!!」


痛いっ!痛いっ!痛いっつ!!


俺は握っていたものから手を離した。


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