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30種族の名前


失礼だと思いながらも、確認のため質問をする。


「あの⋯ドワーフさん。おかしな質問かもしれませんが、ドワーフさんのドワーフって種族の名前じゃないんですか?」


それを聞いたガルラがポカンとした顔をする。


「何を言っているんだアラタ?」


「いや自分が知っているドワーフは種族の名前だから⋯⋯いや、変ですよね失礼しました」


変なことを聞いたかもしれないと言い淀む。

しかし、ドワーフさんは片手で自分のひげを触り視線を左上に向け「ふーむ」と何やら考え込むしぐさをしていた。


「アラタ。確かにドワーフは元々種族の名前だ。150年前にこの村に越してきたとき【ドワーフ】という種族はこの村に認知されてなかったんだ。当時は種族名と名前を言ってたんだが、いつの間にか種族名に敬称(けいしょう)をつけて呼ばれるようになってな。最初は訂正してたんだが、次第に面倒になって種族名を名前にしているのさ」


なるほど⋯。どうやら種族名ということで間違えてないらしい。ただ、アラタは目を丸くして驚いている。


「うっ嘘だろ!?種族名だったのか!?それに150年前ってドワーフさんは何歳なんだよ!?」


「ハッハッハ!そりゃあ教えてないからな!ドワーフの寿命は人族と比べると長いんだ。歳は忘れてしまったが150年前にこの村に越したのは間違いないから150歳以上なのは間違いないな。あと名前だが今さら本名を名乗っても混乱するだけだろ。だから今まで通り【ドワーフさん】で大丈夫だからな」


ドワーフさんは豪快に笑う。


「驚きすぎて何も言葉が出てこねぇよ⋯」


ガルラはドワーフという種族を全く知らなかったようだ。


「それにしてもアラタはよく知っていたな!もしかして自分の故郷に同胞がいたのか!?」


「いやそういうわけじゃないです」


「それなら、見た感じ旅人のようだから旅先で知ったか!?」


「それも違います」


「うーんわからん!アラタはドワーフが種族名だとどこで知ったんだ?」


これは困った。「前の世界のゲームで知りました」とは言えないしなぁ。自分の探求心が今となっては恨めしい。


「実はアラタ記憶喪失だから、どこで知ったのか忘れちゃったんじゃないか?」


ガルラが俺の表情を見て察してくれたのか、助け舟を出してくれた。すぐさま便乗する。


「そうなんですよ。すっかり忘れてしまって⋯」


「やっぱりな。俺にはお見通しだぜ!」


この異世界で俺は何回嘘をつくのだろうか⋯。


「記憶喪失か⋯。それはすまんかったな」


ドワーフさんは複雑な表情で謝る。

知らなかったのだから謝る必要はないと弁解すると本人が言うならと表情の明るさが戻った。


「まぁ、もしも思い出したら教えてくれ。代わりといっては何だが、ワシの出来ることなら力になるぞ!」


ドワーフさんはドンと自身の胸をたたく。


「それならさ。アラタの指輪をみてくれないか?元々そのために俺たちはドワーフさんの店に来たんだよ」


俺が言う前にガルラが俺の代わりに言ってくれた。


「指輪か?別に構わんがどんな指輪だ?」


「これなんですけど⋯」


俺は指にはめてある金の指輪を外してドワーフさんに渡す。


「どれどれ⋯。ん!この指輪は!?」


ドワーフさんが目をカッと見開いた。


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