3神光授かりの儀式
「俺が勇者?」
「そうよ!」
勇者。時としてドラゴンを倒してお姫様を救うカッコいい伝説の存在。男子なら皆が憧れる職業である!
…でも、何故この流れから勇者の提案なんだ?
「勇者はね。転移による異世界召喚が可能な唯一無二の職業なのよ。転生以外に異世界に行く方法はこれしかないわ」
なるほど。それなら理由はわかった。
勇者には確かに憧れる。でも、勇者たるもの魔王を倒す宿命をもつ。それは、異世界において最も危険な職業ではないだろうか。脳筋ワクワク冒険大好きマンなら「はい!喜んで!」というだろうが、御生憎様痛いのは勘弁だ。
「じゃあ勇者になって異世界転移でいいわね!」
「ス⋯ストップ!」
何だかデジャヴ。
「え!?何!?」
「まだ勇者になるって決めてないぞ!勇者ってことは危険な魔物とかと戦うんだろう!俺は帰宅部員だしスポーツもからっきしだから運動神経は0以下のマイナス!転移してもどっかそこらへんのスライムにもやられる自信があるぞ!」
自分で言ってて情けない。でも内心かなり怖いんです許してください。
「勇者にならなくてもいいけれど、それだと転移が出来ないからどうなるかわからないわよ。さっきも言ったけど、この現状はかなり異例だからね」
「どうなるかわからないって⋯何だよそれ」
「そのままの意味よ。転生も転移もしない場合は私もアラタという存在がどうなるのかわからないの」
恐ろしい返答だった。その返答は勇者に転移するよりも怖い。結局どちらが恐ろしいかを天秤にかけて勇者になることを決意した。
「わかった。勇者でも何でもやってやる。ただ、危険な異世界に転移をするなら何か冒険に役立つものをくれないか?」
丸腰で異世界は知識も力もない状態で行くのは、あまりにも無謀すぎる。
「もちろんよ。勇者転移者には装備を授ける神光授かりの儀式が義務付けられているから安心して」
「神光授かりの儀式?」
「詳しく説明するとね…。ちょっと待って。よいしょっと」
またフロディが異空間から本を取り出す。表紙には『この一冊でコンプリート!!誰でもわかる勇者転移!』と書いてあった。フロディーは本をパラパラとめくりながら説明をはじめた。
「『神光授かりの儀式』は聖なる光を五つの装備品に変化させて勇者転移者に授ける儀式のことで、何に変化するかは勇者転移者の内包された力により決定する。ただし、必ず五つの中の一つは強い光の力が籠もった装備品が出現するため、その装備品を主力に戦う勇者となる…ってことよ!」
本に書いてあることを丸々読み上げながら説明しているな…。勇者転移に関しては勉強しなかったのだろうか。
「とにかくやってみましょう」
フロディーは本を異空間にしまうと、異空間の中から今度は眩しく光るオーブを取り出した。
「このオーブにアラタが触れば儀式を行うことが出来るわ」
フロディーはオーブを俺に両手で差し出した。
「わかった…。よし!行くぞ…」
恐る恐るオーブに手を触れる。するとその瞬間強い光が体を包みこんだ。




