28自慢の父ちゃん
「ガルラ⋯ごめん」
知らなかったとはいえ、申し訳なく思う。
「別に気にすんなよ。ギルドの人からは何があって死んだのかは教えてもらえなかったけど、父ちゃんは最後まで国のために魔獣と立派に戦った勇敢な男だって言われてさ、もう会えないけど俺の自慢の父ちゃんなのは変わらないんだ!」
ガルラはニカッと明るく返答をする。
ただ、俺には無理をしたカラ元気に見えた。
「そういえば、ドワーフさんの店に行くんだろ?アラタの着替えも終わったし行ってみようぜ!」
「そうだね。行こう」
深堀りしても良いことはないだろう。
ガルラは空になったコップをトレイに乗せる。
ガルラはトレイを持ち、俺は脱いだ服が入ったカゴを持つ。ガルラお得意の器用なドア開けで部屋を出た。
「このカゴはどこに持っていけばいい?」
「母ちゃんに渡せば大丈夫だ。カウンターにいると思う」
「わかった」
「俺はコップを片付けてから行くよ。すぐに済むからカウンターのところで待っててくれよ」
そういうとガルラはカウンターとは反対の方向に歩き出した。恐らく食器の洗い場があっちなのだろう。
ガルラに言われたとおりカウンターに向かうとアニカさんがカウンターを拭いていた。
「おっ!着替え終わったんだね」
アニカさんは明るく声をかけてきた。
「はい。息子さんの服しばらくお借りします。それと汚れた服を持ってきたんですけど⋯」
俺がカゴを差し出すとアニカさんは受け取ってカウンターに置いた。
「はいよ!じゃあ洗っておくよ!それとまだ希望を聞いてなかったけど、アラタさんは夕食と明日の朝食はうちでいいのかい?」
「はい。お願いします」
「わかった!腕によりをかけて作るからね!楽しみにしてな!ハッハッハ」
歯を出して豪快にアニカさんは笑う。本当に明るい人だな。
「アラタお待たせ!」
アニカさんと話をしているとガルラが戻ってきた。
「おっ!2人揃ったね!じゃあこれは私からプレゼントだ」
アニカさんはカウンターの下から2つの茶袋を取り出す。
「母ちゃん?これは何だ?」
「その中には一袋に50ソリアずつ入ってるよ!お腹が空いたらそれで何か買って食べな!」
「母ちゃん。いいのか!」
「もちろん!グフェル村を楽しんできな!」
「ありがとう母ちゃん!」
「ありがとうございます」
「いいさ!2人とも仲良くな!」
アニカさん⋯。太っ腹すぎます!
「じゃあ母ちゃん行ってくる!」
「じゃあ、い⋯いってきます!」
「あぁ!気をつけて行ってきな!!」
俺は茶袋を服のポケットにしまうとアニカさんに見送られながらドアを開けてガルラと宿を出る。
「さて!まずはドワーフさんの店に行こう!そのあとは色んな店を回ろうぜ!」
「おう!」
遂にあの異世界のドワーフに会える!
ウキウキとした気持ちで胸が膨らんだ。




