27守護者協会《ガーディアンギルド》
「お待たせ!母ちゃんと話してたら遅くなった。ごめんな!」
写真を見ていたらガルラがトレーに茶色い土器のようなコップを二つ乗せて帰ってきた。トレーを持ったままドアの開け閉めを器用にする。荒々しい雰囲気だけれど、そういうところに宿屋の息子らしさを感じた。
ガルラはトレーを机に置くと俺の姿をじっと見る。
「おっ!俺の服似合ってるじゃん!!でもその組み合わせだと少し地味じゃねぇか?」
「いや。これで大丈夫」
「そうかぁ?まぁアラタが気に入ったならいいか」
やっぱり異世界基準だと地味なんだろうか?
それでも派手な服に変更する予定はない。
ジュースを飲むためにラグマットに座るとガルラも机を挟んで正面に座った。
「ジュースはゴイチにしてみた。俺、好きなんだよね〜」
ガルラはニコッとしながら俺の前にコップを差し出す。お礼を言って受け取りコップの中をみると真っ赤で黄色い小さなツブツブが浮いた液体が入っていた。コレは少し飲むのを躊躇するな⋯。
「じゃあ乾杯!」
ガルラはコップを持つと俺が持ってるコップにコチンと当てる。乾杯の習慣はこの世界にもあるんだな。
ガルラはその後コップを口に運んでグビグビと飲む。流石に飲まないのは悪いと思い勇気を出して一口飲む。⋯⋯うまい!酸味と甘味が見事に調和されている。ツブツブは全く気にならず後味は爽やかなので何杯でも飲めそうだ。一口どころか俺もグビグビと飲む。プハーッと2人そろって息をつき、すぐさまコップを空にしてしまった。
「もしかしてアラタもゴイチ好きか!?」
「酸味と甘味の感じが結構好みだ。ゴイチって果物か?」
「あぁ。グラマンのオジサンが非番の時に持ってきてくれるんだ!」
「グラマンさんって家族思いなんだな」
「オジサンも自分で『俺は家族を愛しているからな!』って言ってた」
「本当かよ。ってかグラマンさんのモノマネうまいな」
「『家族こそ人生だ!あぁ素晴らしき人生!!』」
「そこまで言ってないだろ」
「バレたか」
2人でハハハと笑い合う。
楽しいなぁ。何気ないこの会話が何だか懐かしい。
ふと、写真のことを思い出す。
「そういえばガルラ。あの写真に写ってるのってガルラとガルラの父親か?」
「そうだよ。カッコいいだろ俺の父ちゃん!守護者協会で勇敢な爆撃者の異名を持ってたんだ!」
「守護者協会?」
「守護者協会を知らないのか!?あぁそうか。アラタは記憶を失ってるんだったな。守護者協会はこの世界に住む人々が安全で安心して暮らせるようにと願いを込めて作られた組合組織なんだ。ギルドに所属する者は守護者と呼ばれて、暮らしを脅かす魔獣討伐や探し物調査などの様々な依頼を受けて活動をする。それで父ちゃんはその守護者協会内でも有名人でさ、特に魔獣退治では手強い魔獣を拳一つでバンバン倒していたんだ。その勇敢さから勇敢な爆撃者って呼ばれてさ!ヤフトコを倒したときに使った技の放爆破弾も父ちゃんから教わったんだぜ!!」
「凄いなぁ。本当にカッコいいじゃん!」
「へへん!」
よほど嬉しいのか自身の父親の話を誇らしげに話している。興奮しているのか拳を体の前で握ったり、技を出すかのように拳をつき出したりしてボディランゲージがかなり激しい。でもそれだけ自慢の父親なんだなぁ。そんなに凄いなら是非会ってみたい。
「その父ちゃんってさ、今日はこの宿に帰ってくるのか?」
それを聞いたガルラは眉が下がって困ったような表情をする。
「実はさ⋯もう帰ってくることはないんだ。父ちゃん死んじゃったんだよな」
手で頭をかきながら少し笑ってガルラは言った。
ただ、目の奥はとても悲しそうに見えた。




