25異世界の友達
「母ちゃんただいまぁ!客連れてきたぞ!!」
室内に入ると木と石で出来たテーブルとイスが各所にあり、天井にはラッパの形をした銅色の照明が強く発光していた。
ガルラは真正面にあるカウンターに向かう。
カウンターには黒髪でベリーショートの女性がいた。
服装は白シャツに革のベストを着ている。
「ガルラかい?お帰り!何?お客さんを連れてきてくれたのかい?」
「あぁ!色々あって仲良くなったヤツなんだ!」
お互いニカッと喜んでいる。2人とも笑い方がそっくりだな。
「イグマ亭にいらっしゃい!私はアニカっていうんだ。よろしく!⋯ってだいぶ格好が汚れているじゃないか何があったんだい?」
「いや⋯それは⋯」
自分の息子のことだし話をしてもいいものか⋯。
「汚れているのは俺のせいなんだ⋯。俺がちょっと悪者退治しているときに巻き込んじまって⋯」
ガルラは悩んでいる俺を察したのか正直に言った。
「何っ!ガルラ!!また危ないことをしたのかい!?お前は私の宿を継ぐんだからいい加減に無茶はやめな!」
「人助けしただけだよ。わかってるって」
あれ。ガルラは旅をしたいんじゃなかったのか⋯?
ガルラは笑っているけど何だか違和感があった。
「お客さん悪かったね。もしも泊まるんだったら服を洗ってあげるよ。うちの息子が迷惑かけたみたいだしね」
「良いんですか?じゃあお願いします」
「よし。じゃあ洗っている間は息子の服を着なよ。ガルラもそれでいいかい?」
「もちろん!」
ガルラの服か⋯。派手じゃなければいいんだけど⋯。
そういえば、グラマンさんの紹介の件は伝えた方が良さそうかな?
「あと、実はグラマンさんからの紹介も受けているんですけど⋯」
「ん?ああ!あんたがアラタさんかい?弟から話は聞いているよ。若いのに大変だったね。記憶喪失でお金もないんだろ?ここの代金は弟が払うとのことだから気にしなくて大丈夫だからね」
「ありがとうございます」
グラマンさんがいつの間にか話をしてくれていたみたいだ。
「お礼なんていらないさ。むしろグラマンが悪かったね。まぁそれだけ仕事熱心な弟なんだ。許してやってくれ」
アニカさんはそう言うと後ろの木棚を開けて、フックにかかった鍵を取り出した。
カウンターの上にその鍵を置く。
「これが部屋の鍵だ。2階の一番奥の部屋を使ってくれ。うちは朝食と夕食を希望者には提供している。ただグラマンが1泊分の食事代も込みで払ってくれるみたいだから良かったら食べてってくれ」
至れり尽くせりだった。グラマンさんに感謝の思いを抱きながらカウンター上の鍵を取る。
「それと、指輪を見てもらいにドワーフさんの店に行くんだろ?何だか息子と仲が良いみたいだし、良かったら案内してもらいな。ガルラもそれで良いだろう?」
「母ちゃん任せとけ!完璧な案内をするぜ!」
「流石は私の息子だ!!」
何だか熱いな。
まぁとりあえず店には案内してもらえるみたいだし、一安心だな。
「荷物があれば預かって部屋に置いておくけど見た感じなさそうだね。じゃあ着替えを持ってこないとね。ガルラ頼めるかい」
「アラタ。それなら俺の部屋に来なよ!着替えをワザワザ持ってくるならその方が早いってヤツだ!」
仲良くなったとはいえ、会ったばかりで部屋にはいっていいのだろうか?
「ガルラ。部屋にはいっていいのか?」
恐る恐る質問をする。
「もう俺とアラタは友達だろ。遠慮すんなよ!」
何の間もなく即答だった。
「アッハッハ!それはいい提案だね。ガルラの部屋はカウンターの奥の部屋だよ。行ってきな!」
アニカさんがカウンターの扉をあけてくれる。
俺はアニカさんに再度お礼を言うと着替えるためにカウンター奥のガルラの部屋に向かった。




