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24ガルラとユバナ


イグマ亭で経営している人が母親ということは、グラマンさんの親戚ということだ。ならソナライズの時に答えた内容を話したほうがいいかもしれない。


「ガルラ。実は俺、記憶喪失で出生地がわからないんだ」


ガルラはえっと驚いた顔をする。

ものすごい良心の呵責だ。


「そっか⋯。まぁ生きてるうちに思い出せばいいさ。記憶がなくても死んだわけじゃないんだからさ⋯」


なんか励まされてしまった。

微妙に気まずい時間が流れる。

とりあえず何か違う話題で空気を変えなきゃ本当に辛い。


「あ⋯そういえば⋯。ユバナさんだっけ?さっきのやりとり聞いてたけど知り合いなのか?」


「あっ?ユバナか。知り合いっていうか小さい頃からの関係っていうか。まぁ分かりやすく言えば幼馴染ってヤツだな!」


「どうりで仲良さそうにしてたわけだ」


「そうか?まぁ大切なヤツなのは変わらないけどな。今回の置き引き事件だってユバナから頼まれたんだぜ。『私の働いている温泉で置き引き事件が増えているから何とかして』ってさ。アイツは昔からトラブルに巻き込まれやすい体質でさ。守ってやらなきゃいけないんだ」


ガルラは目に力を宿して真剣な表情だった。

ユバナさんがガルラを信頼している理由がわかった気がした。


「もしかして⋯ユバナさんのこと好き?」


「はっ!?何でそういう話になるんだよ!違うって!腐れ縁ってやつだから!!」


「ムキになってないか?ますます怪しいな?」


「なっ⋯何がだよ!?アラタ!何かひどいぞ!?」


「ごめんって。ハハハハハ⋯」


「ったく⋯。ん?どうした?」


何だか智也と話してるみたいで、楽しいけれど悲しくもあった。


「な⋯なんて顔してんだよっ!笑ったり泣いたり忙しいなっ!ほら元気だせって!」


いつの間にか泣いていたみたいだ。


「⋯ガルラ」


「なんだよ?」


「ありがとう」


「いきなりだな!?まっ!いいってやつだぜ!!」



その後もガルラとしばらく談笑しながら煙突の場所まで戻ってきた。道のりは行きと帰りで一緒のはずなのに凄く短く感じた。


「そろそろ着くぞ〜」


「えっと⋯ここからどこに行くんだ?」


「ん?すぐソコだぞ?」


ガルラは指を差す。

何と煙突から大体30メートルくらいしか離れていない場所に赤いレンガ調の建物があった。

看板には大きく【イグマ亭】と書いてある。

灯台下暗しというやつだろうか?

グラマンさんの大雑把な地図でも問題ないくらい煙突の近さにあるイグマ亭を見つけられなかったことが恥ずかしかった。

これも全部ヤフトコが急に話しかけるからである。


「今なら母ちゃんが受付してるはずだ!さぁ入ろうぜ!!」


「あっ待って!ガルラ!!」


ガルラが先陣を切って木のドアを開ける。俺は後をついて宿に入った。


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