23イフェル・ガルラ
「母ちゃんの客ならイグマ亭まで案内してやるよ」
ガルラさんが親指を立ててありがたい提案をしてくれた。
「このように言っておりますが旅人さんはいかがでしょうか。ガルラは見た目と言動は荒々しいですが頼りになる男です」
「照れるなぁ!ユバナはそんなに⋯」
「余計な茶々を入れないで!」
「おっおう⋯」
ガルラさんが何か言いかけたが、ユバナさんが遮る。
仲良しなのかよくわからないなぁ。
「いかがですか旅人さん」
ユバナさんがあらためて聞いてくる。
もちろん断る理由はない!
「ありがたいです!どうかよろしくお願いします!」
頭を下げてお願いをする。
「よし!じゃあさっそく行くか!!」
ガルラさんは片腕をあげてやる気満々だった。
「えっ?でもまだ入室手続きの時間になってないんじゃないですか?」
ガルラさんに疑問をぶつける。ヤフトコの話だと入室手続きの時間にならないと手続き出来ないはすだ。
「何だそれ?別に時間ならいつでも大丈夫だぞ?母ちゃんがいない時は別の従業員がいるから留守ってこともないしな」
「じゃあ今からでも大丈夫なんですか?」
「もちろんってヤツだぜ!」
どうやらヤフトコの嘘だったらしい。
イラッとしたので縄で拘束されたヤフトコを睨みつける。
「それじゃあ行くぞ!イグマ亭にレッツゴーだ!!」
初めて会ったはずなのに肩に手を回される。
ちょっと馴れ馴れしいとも思ったけれど、何だか憎めなかった。
「それではお気をつけて。ガルラ。よろしくね」
「はいよっ!」
軽い挨拶をしてユバナさんと別れた。
来た時はヤフトコと歩いてきたが、その道を今はガルラさんと歩いている。何だか不思議だった。
「なぁ旅人さんの名前を聞いていいか?ずっと旅人さんって言うのもなんか変な感じがしてな」
そういえばまだ名乗っていなかったことに言われて初めて気がついた。
「あっ。そうですよね。吉井荒太っていいます。よろしくお願いします」
「おう!じゃあアラタだな!よろしく!!ユバナとのやりとりで知ってるかもしれないけど俺も自己紹介ってヤツだ。俺はガルラ。イフェル・ガルラってんだ!よろしくな!」
爽やか笑顔で自己紹介をするガルラさん。
何だか太陽みたいな人だな。
「なぁなぁアラタって今何歳なんだ?」
「えっと16歳ですけど」
「マジかっ!同い年じゃねぇか!!」
まさかの同い年だった。
偶然ってあるものなんだな。
「じゃあさ!旅ができる年齢になってすぐ出生地から出たってことだよなっ!最高だな!!」
「えっと。旅ができる年齢ってどういうことですか?」
「どういうことも何も国の法律で緊急時以外では出生地から出て旅に出られるのは16歳からだろ?アラタもそれで出生地から出たんじゃないのか?あっ、あと敬語ってヤツか。それいらないからな。同い年なんだから遠慮はなしってヤツだ!」
新事実だった。16歳から出生地を出る許可がおりるのか。関所でグラマンさんから出生地を聞かれた理由がわかった気がする。
「わかったガルラ。あらためてよろしく」
「よろしくな!んでアラタの出生地は何処なんだよ?俺さこの村から出て旅に出るのが夢なんだ。まぁ母ちゃんには止められてるんだけどさ。だから色んな場所を知っておきたいんだ!」
ガルラの目はキラキラと輝いて見えた。
それにしても出生地か⋯。何と答えるべきか。




