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2神々の預言書


「話が違うじゃないの!どうすればいいのよ!」


自分もこの状況をどうすればいいのかわからない。


あの先ほどまで偉大な雰囲気の女神様はそわそわしながら無駄に周りをウロウロしている。


「あぁ!女神試験に合格して慣れてきたと思ってたのに台無しじゃない!」


女神になるのに試験ってあるんだ。

大変なんだなぁと他人事のように思う。


すると、女神様は自分の所にズカズカと歩み寄ってきた。


「あなたは何で轢かれてないの!?」


あまりにも酷い暴言。少し前にいいなぁと思った高校男子の純情を返してほしい。


「神々の預言書には『公園からボールを追っかけて飛び出した子供がトラックに轢かれそうになる時に身を挺して守る』って書いてあるんだけど!」


なんだそりゃ?確かにその状況になったら助けるかもしれないけれど、子供は普通に公園を出ていったし、トラックは普通に通過しただけだ。


「もうすぐで女神を始めて千年目の記念すべき転生業務だったのに⋯」


ん?千年目?


「あれ?千年も経っているならとっくに慣れている大ベテランじゃないか?」


「女神は一万年経ってからが本番なのよ。千年くらいじゃまだまだ新参者なんだから」


正直、千年経ってもビギナーな仕事はやりたくないな。

女神業界に同情をしているとビギナー女神は頼んでもいないのに一冊の分厚い本を異空間から取り出す。


その本には『どんな転生業務もこれでバッチリ!!攻略転生マニュアル』と表紙に書かれていた。


異世界語なのか自分の世界とは違う言語で書かれていたが、女神の力か空間の力なのかは知らないが自分にも読むことが出来た。


「ほら!このページ!!」


ペラペラと本をめくると『転生者が自分の死を受け入れられない時』といった項目ページを見せてきた。

内容を見ると、先ほどまでと似たやりとりが例文として記載されていた。マーカーのようなもので文字が塗られているので努力家なのだろう。


「わかってくれた?マニュアル通りにやったのに何もかも上手くいかなかったわ」


まさかのマニュアル人間だ⋯。いやマニュアル女神か。


「でもおかしいわね。神々の預言書はマニュアルと違って嘘はつかないはずなのに⋯。あなた何者?」


色々とツッコミたい気持ちだったが、じっと見つめて自己紹介を待っている女神に悪いと思い、ツッコミはやめておいた。


「名前は吉井荒太。アラタって呼んでくれ。好きなものはコーヒー牛乳。よろしくねっ!」


なんかもう面倒くさくなったので適当に自己紹介。


「名前は神々の預言書のおかげで知ってるし、あんたの好きなものなんて興味ないわよ。私が知りたいのは、預言通りにならないのは何故なのかをしりたいの!」


本当に最初の神々しさは何処に行ったのだろうか。

そのトゲトゲしい口調には優しさが感じられません!

今まで我慢してきた憤りの気持ちが爆発して、ありったけの思いをぶつける。


「俺が知るわけないだろう!そもそも、いきなりこんな白い空間に飛ばされてトラックに轢かれたんだと言われても意味不明すぎて理解できんわ!」


怒りに任せて放った言葉だが中々に芯を捉えた物言いだったのではないだろうか。


女神はハッとした表情をしたかと思ったら、シュンとした表情に変わった。


「そうよね。あまりにもイレギュラーなことだったから我を忘れていたわ。本当にごめんなさい」


なんだか実に人間味のある女神である。そこまでシュンとされると何だか罪悪感がわく。


「いやこっちも強く言い過ぎた。ごめん。とりあえずこっちは名乗ったんだし、そっちの名前も聞いてもいいかな。なんて呼べばいいかわからなくてさ」


女神様と呼んでもいいんだろうが、何だか親近感が湧き名前があるなら聞きたくなった。


「そうね。まだ名乗ってなかったものね。私の名前はアレフロスディーテ。呼びにくかったらフロディーって呼んでちょうだい」


フロディー…。不思議な名前だけれど女神らしい名前だなと感じた。


「それにしてもどうしよう。転生をせずにこの場所に居続けることはできないの。でも元々の世界で死んだ訳じゃないから異世界に転生させることもできないし…」


「元の世界に戻すこともできないのか?」


「世界のルールとして一度この空間にきたら同じ世界に転移や転生をすることは出来ないの」


そうなのか。ゴタゴタとしていたから忘れていたが、もう友人や家族に会えないと思うと強い哀しさに襲われた。


「そもそも亡くならずにこの場所にやってくることが異例中の異例だから、私自身もどうしてあげればいいのかわからなくて⋯」


うーん…次の言葉が見つからない。フロディーも何だか気まずそうに黙りしていた。


「そうだわ!」


フロディーが急に声を上げたと思ったらパッと明るくなる。


「えっ。どうした?」


「異世界で勇者やってみない!?」


力強い眼差しでフロディーは言い放った。

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