19マグフェル石
「あの、ヤフトコさんに聞きたいことがあるんですけど」
「何でございますか?」
温泉まで時間がかかりそうだったので、移動しながらヤフトコさんにグフェル村のことを聞いてみる。
「この村、地面が暖かくて気温が高いじゃないですか。何でかわかりますか」
「そうですね⋯。アラタ様。マグフェル石はご存知でしょうか」
マグフェル石?
確か店員が名前を言っていたような気がする。
ただどのような石なのかは知らない。
「マグフェル石ですか?いえ知りません」
「では説明させていただきます。マグフェル石とはこの地帯に眠る鉱石のことです。その昔、地質調査隊が熱と魔力を感じられるこの地帯に疑問を持ちボーリング調査を始めました。すると橙色のクリアで熱と魔力を持った石が発掘されたのです。その石がマグフェル石です。マグフェル石は、その綺麗さから宝石としての価値もありますが、寒い地方で暖を取る目的や火魔法の魔力伝達の良さからマジックアイテムに使用されるなど、使用方法は多岐にわたります。グフェル村が高い気候なのに暖かく過ごしやすいのはマグフェル石の放熱のおかげなのです」
「万能じゃないですか!そんなに凄い石なんですね!」
「はい。ちなみに当時の地質調査隊もマグフェル石の有用性に気づき人を集めて採掘をはじめました。やがて採掘をする者、その石を加工する者、その者たちに食料などの商品を売る者などがこの地帯に集まり、それがグフェル村の始まりといわれています」
異世界ではじめての村だったけど、自分の元の世界と一緒で歴史があるんだな。村が栄えている理由がわかった。
「ありがとうございます。何だかスッキリしました」
「お役に立てて幸いです」
ヤフトコさんは相変わらずニコニコとした表情でそう言った。
村内でも温泉は離れた場所にあるらしくヤフトコさんと一緒にひたすら歩く。村の人が整備している道で石畳が敷かれており、かなり歩きやすかった。また煙突のあった場所と比べると建物が少ない場所だったが村人の往来が激しいので間違いなく温泉はあるのだろう。ただ村人が余裕の表情で往来しているのに対して、自分はヤフトコさんに元気づけられながらふぅふぅと歩いている。何だか情けなかった。
しばらく歩くと白い湯気や何かを腐らせたような独特な臭いの主張が激しくなってきた。
「アラタ様。あの旗が見えますか」
「は⋯はい⋯⋯」
赤い旗が遠くに見える。
「あの旗の場所まで行けば、温泉はもうすぐですよ」
「ほ⋯本当ですか?」
「はい。もう少しです頑張りましょう」
途中挫けそうにもなったが、ヤフトコさんに励まされながら何とか旗まで辿り着いた。
「おぉ⋯」
旗の場所から見えた絶景に感嘆の言葉が飛び出した。




