14出生地
「さて、準備はいいか!?」
まずいまずいまずい!!勇者や異世界に関する質問がきた場合は下手なことが言えないぞ!どうする……。いや……まて?もしも勇者だと判明すれば装備品や宿を優遇してもらえるかも?なら、それがいいか?別に悪いことしてないしな……。いや!まて違うだろ!!もしも勇者だと判明して周囲にバレたら勇者アンチに命を狙われる可能性がある!!この異世界を怯えながら生活するのは精神的にも厳しい……。何としてもバレないようにしなければ。
「おいっ!はじめていいのか!?返事をしないということは、もしかして何か後ろめたいことでもあるのか?」
守衛の男は訝しげに顔を覗き込む。
「いえっ!大丈夫です!はじめてください!!」
「よし!じゃあまずは名前と疑うわけじゃないがもう一度年齢を教えてくれ。名前はフルネームで頼むぞ」
これは大丈夫だろうか?
異世界の名前だから怪しまれなければいいが……。
「えっと…。名前は吉井荒太。年齢は16」
「ソナライズの光は変わらずか…。珍しい名前だが嘘はないようだな。じゃあ次いくぞ」
『珍しい名前』と言われた時にヒヤッとしたが、言及されなかったので大丈夫そうだ。
「この村に来た目的は何だ?また、村を害する気持ちはないか?」
村に来た目的か……。この世界の情報集めが目的だけど、その答えだと怪しまれそうだ。とりあえず宿探しと言っておけば嘘はないだろう。
「旅の宿探しです。村を害する気持ちは全くありません」
「その答えに嘘偽りはないようだな!さて、最後の質問だ」
いいぞ!何とかなりそうだ!!
「自分の産まれた出生地を教えてくれ!」
完全に油断した……。
そうだよな。名前とか年齢を質問するなら住所的な質問も当然するよな…。どうしよう…。
「おいっ!どうした?もしかして出生地を知らないのか?町や村など人がいる場所で育ったなら間違いなく憶えているはずだぞ?いや……もしかして孤児か?孤児院に入らず両親も知らずに野生で育つ孤児もいると聞いたことがある。もしかして……そうなのか?」
言葉に詰まった様子から怪しまれたようだ。
しかし、この世界で両親はいないのだから孤児だというのは強ち嘘じゃない。ならば…!!
「そ……そうです!!俺は両親のことなんて知らない孤児なんです!!」
そう俺が言った瞬間、ソナライズは黒く光りだした。




