12グフェル村
ライアスさんの姿が見えなくなるまで見送ると教えてもらった村に行ってみることにした。
緩やかな道で、まるで整備されているかのように広々としているため、とても歩きやすい。また、魔獣が出る気配は全然なかった。
それにしても、フロディーに会う方法はないのだろうか。一言……。いや……百言文句を言ってやりたい!
お詫びで安物を押し付けるフロディーは女神よりも邪神だと思う。
イライラした気持ちで途中で拾った枝を振り回しながら道を下る。
とりあえず、これからどうするか。
さっきまでは危険な洞窟を抜けることしか考えてなかったが、いざ安全な場所にでると今後のことを考えてしまう。
そもそも俺は謎の空間に自分の存在を消滅させられるのが嫌で勇者転移をした。ただ、勇者らしく復活予定の魔王と戦えるかと言われたらNOだ。転移する前にフロディーにはかっこつけて返事はしたが、狼一匹に苦戦している状態で魔王討伐なんて無謀だと思う。そもそも、半ば強制的に勇者転移の選択をとらせて装備もヒドイ。こんな目に合わせるフロディーの言う事を聞く必要はあるのだろうか。
否!絶対にない!!
俺はこの異世界を自由に生きることに決めた。
まず異世界での衣食住をクリアする。
そして全部が安定したら元の世界に戻れる方法がないかを探す。
もしも勇者でしか魔王を倒せないのであれば、この世界の住民は悲しむだろうか。いや、さっきまで高校生の子どもだった俺が考えることでもないだろう。
とにかく今はこの世界の情報がほしい。
ライアスと話をしたが情報としては少なすぎる。
今から向かう村で何か情報を得られるといいんだが…。
あれこれ考えながら進んでいると石造りの塀らしきものが見えてきた。
まだはっきりとは見えないが自然の中にある人工物はかなり目立つ。
石塀の外からは大きな煙を出す巨大な煙突のようなものが見えた。高く聳え立っていて雄々しい姿をしていた。
ここがたぶんライアスさんの言っていた村だろう。
「すごいな!」
期待に胸を膨らませて歩みを速めた。
ふと気温が上がっていることに気づく。
さっきまで早朝ということもあってか中々に寒かった。
それが今じゃ、顔にじっとりと汗をかいている。
村に近づくにつれ、どんどん暑くなっていった。
持っていた枝を投げ捨てて、高揚感にまかせて走る。
石塀近くに到着すると村に入るためのゲートを見つけた。ゲート上部には異世界語で村の名前が彫られていた。
【ようこそ!グフェル村へ】




