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『何から何まで異様な男』〜夫の親友が夫を溺愛してきて困ります。こっちは新婚なんですなんとかしてくださいっ!!〜  作者: 江古左だり


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14/16

(14/16)実は1回寝てないですか?

 次の土曜日。紫陽からサトルに頼んで実家に来てもらった。


 今日はホットプレートで焼きそばである。


 サトルはいつも通りだった。勝手に冷蔵庫からビールを取り出して勝手にみんなに注いで勝手に乾杯した。


「来週はカレーにしよう!」

「いいね〜」


 確かにここ。『テーマパーク』だなぁ。

 笑い声と輝きに満ちている。大人4人にはあまりに狭くて。肩を寄せ合って。何かを取りに行くときは誰かの横をすり抜けるように通るしかないし。みんながみんな体の距離が近くて。


 あのサトルの実家の。あまりに広くてゴージャスな様子とはかけ離れている。


「もうあれから女どもが殺到しちゃって大変なのよ」


 サトルがぼやく。


「『YouTubeっていくらもうかるの!?』とか聞かれて。お前ら金しかねぇのか! 金が全てか!!」

「ブラックカード持ってるやつに言われてもねぇ。女どもには黄金のATMにしか見えてないよ!」

「カブラギ。てめぇ。だいぶひどいぞ」


「「はははは!」」母の琴絵とタカハシが笑う。


 窓を開けっ放しにしているので風が気持ちいい。縁側に野良猫がやってきて「ナ〜。ナ〜」と鳴いている。


「サトル。結婚すりゃいいじゃない。さーっと女どもが消えるわよ」

「じゃあ。琴絵結婚してよ。一緒に住まなくてもいいわ。契約結婚ね。給料払う」

「「「どこの少女漫画か!」」」


「琴絵がダメならカブラギ〜」

「夫がここにいますけど」


『あーあー』とサトルがテーブルに右頬をつけてぺたーんとした。

「やっぱ一昨年おととし無理矢理タカハシとうちの姉貴を結婚させときゃよかったんだよなぁ」


「はっ!? 何!? アンタおねーさんと是也さんを結婚させようとしてたの!?」


 紫陽が慌てた。


「そーだぞー。タカハシがクッソみたいな女と目出たく破局したからよー。『今がチャンスだ!!』と長生子ちょうこを猛プッシュしたんだけどよー。全然落ちねえんだよな。タカハシ。兄弟になりたかったな〜」


……。


…………。


 コイツ。マジで『兄弟』になるつもりだったのか……。


 どんだけタカハシ溺愛してんだよっ!!!



 タカハシが帰る時に「オレも!」とウキウキ席を立ってしまった。

 完全に兄にじゃれつく弟であった。


 紫陽と母の琴絵は2人でホットプレートを片付けた。

 あと2年。こうやって母娘の時間を大事にしていきたい。


 琴絵の子育てのゴールは目の前だ。



 久しぶりに夫婦2人の時間がやってきた。


『茶髪先生』もだいぶ慣れた。紫陽は毎回収録に立ち会わなくてもよくなった。

 お弁当屋さんのバイトも回数を減らしたし。ちゃんと学業を優先して。ちゃんと先生になって。

『高橋先生と同じ教壇に立つ』夢を叶えるのだ。


 だって紫陽は『夢追い人』なんだから。


 まだ21歳で。知識もない経験もない金もない。


 若さだけがある。


 夢を叶えるパワーだけは誰よりもある。



 それで夫に聞いてみた。

 いつもの『リビングルーム図書館』で本を読む夫に。とびきりの紅茶を入れて聞いてみた。


「あの……是也さん」

「うん。何? 紫陽」


「サトルって何でここまで是也さんのこと好きなんですかねぇ」


 夫がソファに本を置いた。


「亡くなったお兄さんの代わりなんじゃない?」

「うーん。それだけじゃない気がするんですよ」

「ないって……」


 夫が紅茶を口に運んだ瞬間に言った。


「実は1回くらい寝てないですか?」


 ブッ


 夫が紅茶を口から出してしまった。慌てて2人でテーブルを拭く。


「紫陽! 人が物を飲んでいるときに変なこと言うなって何度言ったらわかるんだっっ」


 だって面白いんだも〜ん。


「是也さん! いいですよ!! 私是也さんの過去の女とか本当腹立つけど、サトルならいいです。実はかつて恋人だったとかでもいいですよ! そうでもないとあの『溺愛』説明できなくないですか!?」


「突飛すぎるんだよ…………」


 是也は一瞬ため息をついた。


「紫陽」

「はい」

「ごめんね」

「何がですか?」


「ほら……『降格』騒動の時。サトルに止められたからって2日も本当のこと秘密にして」


「そうですよ! 心配で泣きましたよ私!! 是也さんはね! あまりに説明しなさすぎるんですよ! 私みたいな『発想力豊かなタイプ』はいろいろ考え込んじゃうんですからね!」


「なるほど……。『突飛』は確かにそう言い換えられるね。ポジティブだ」


 ポジティブですとも! ネガの反対はポジなんですとも!!


「わかった。ちゃんと説明するからね」



「実はね。紫陽。俺とサトルは学校の同僚として出会ったわけじゃないんだよ」


「え? その前から知り合いだったとかですか?」


「そうなんだ。初対面は俺が23歳でサトルが16歳のときなんだよ」


「そんな前!?」




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