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第22章 「轟け機銃掃射!始動するローペン駆除作戦」

 母艦である強襲揚陸艦から逐次送られてくる指示と多機能ヘルメットに表示した高性能レーダーとセンサーシステムに基づく情報に従って急行した海域は、えらい事になっていたの。

「うわぁ、これは凄い…レーダーの画像では確認したけど『百聞は一見にしかず』とは、正しくこの事だよ。」

 そのあまりの数の多さに、私も思わず呆れ返っちゃう程だったよ。

 もう物凄い数の肉食ローペンが、大規模な群れを成して飛行していたんだからね。

 後ろの方の個体がカラスかハトか何かのように感じられちゃうけど、あれも全部ローペンなんだろうな。

 そもそもパプワニューギニア産の特定外来生物である肉食ローペンは、生体ならどんなに小さな個体でも翼長二メートルには達するはずだからね。

 それがカラスやハトのように見えてしまう程に奥までギッシリいるんだから、もう聞きしに勝る密集具合だね。

 オマケに凶暴で陰湿そうな悪人面がズラッと雁首揃えて目を光らせているんだから、もう本当に参っちゃうよね。

 あの頑丈そうな嘴と鋭い牙でもって海産物を思う存分に食い荒らして、和歌山の漁場を自分達の縄張りとして荒らそうとしているんでしょ?

 全く、嫌になっちゃうよ。

 そもそも善良な面構えの特定外来生物なんか、この世にいる訳がないんだけど。

 件の肉食ローペンにしても、原産地のパプワニューギニアではデビルフライヤーこと「空飛ぶ悪魔」という異名がつけられて忌み嫌われているんだからね。

 物事を見かけで判断するのもあんまり褒められた真似じゃないかも知れないけれども、あの太々しい悪人面なら「空飛ぶ悪魔」と呼びたくなるのも人情だよ。

「お〜お〜、さっきの千里ちゃんじゃないけど凄い量だね。まるで小さい頃に映画館で見た『お願い!バケねこん 伸也(のぶや)とネッシー』みたいじゃない!」

「あっ!分かったよ、覚葉ちゃん!それってバケねこんと伸也君達がロストワールドでプテラノドンに追いかけ回されるシーンでしょ。」

 そもそもローペンって、翼竜のランフォリンクスによく似てるからね。

 覚葉ちゃんがそういう発想に至るのも、至って自然な流れだよ。

「もっとも私達は、ローペンの群れを追い詰める側だけどね!そうでしょ、千里ちゃん?」

「それは同感!徹底的に駆逐してやるんだから!」

 とはいえ、軽口を叩いてばかりもいられないよ。

 こんな連中に狩り場として目を付けられたんじゃ、加太地区を始めとする和歌山市の漁業は壊滅必至だからね。

 私達がいる限り、南紀の豊かな水産資源には指一本たりとも触れさせはしないよ。


 そうして敵対勢力の群れに接触しようかというタイミングで、紀ノ国の艦長であらせられる新宮沖美大佐から攻撃指令が下されたんだ。

「総員、撃ち方始め!」

「はっ!承知しました!復唱します!撃ち方、始め!」

 機種の向きを転換させて多機能ヘルメットで照準を合わせたら、後はハンドル付近に設けられたボタンを押すだけだよ。

「薄汚い特定外来生物め、この二十ミリ機銃で八つ裂きにしてあげるよ!」

「ギエエエッ!?」

 軽快でリズミカルな銃声と、致命傷を負った敵が上げる凄絶な断末魔。

 そして辺りに濃厚に立ち込める、血臭と硝煙臭の入り混じった芳香。

 この聴覚と嗅覚から入る素晴らしい刺激に、私は背筋がゾクゾクするような興奮と悦楽を感じていたんだ。

「ああ、良いねえ…こうでなくっちゃいけないよ!」

 何とも言えない愉悦に、こんな独り言が思わず出ちゃうね。

 そう、これこそが私の求めて止まない戦場だよ。

 出会い頭にぶっ放した機銃掃射で何十羽ものローペンを肉塊に変えてやったけど、まだまだ残りの方が圧倒的に多いんだよね。

 だけど、作戦の第一段階としては良好な戦果だよ。

「ケエエエッ!!」

 仲間の上げる断末魔の絶叫と血煙に猛り狂ったのか、それとも間近に迫った死の匂いへの焦りか。

 ローペン達の群れが上げる鳴き声が、さっきよりも甲高く変化したよ。

 どうやら奴さん達は、私達の事を明確な敵だと認識したみたいだね。

「そうそう、良い子だね。お仲間の仇は私達…思う存分に相手してあげるよ!」

 仲間を殺された怒りと死の臭いに興奮してくれたら付け入る隙もそれだけ出来るし、明確な敵として狙ってくれるならこれまた対処もやりやすい。

 そして何より、私達のウォーミングアップにもなるからね。

 さあ、いよいよ血湧き肉躍る害獣駆除の幕開けだよ!

 佐官としての初陣は華々しくスタイリッシュに、そして尚且つ猛々しく豪快にやらなくっちゃね。

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企画概要はこちら 鋭意執筆がんばり中の作品たち↓ 中長編執筆/ バナー作成/瑞月風花さま
― 新着の感想 ―
いよいよ衝突ですか。 アドレナリン大盤振る舞いな感じでいいスタートを切りましたが、相手の数からして途中から飽きてきたりしそうでもありますね……同じ作業の繰り返しほど気が狂う事はないし。 途中で何度か…
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