テキスト
天地を揺るがすような叫びが聴こえた。大海の部屋からだ。聴こえた家人一同、その部屋に向かう。
大海が泣いていた。慟哭の涙だった。一体、何があった。部屋に、大海を冷徹な眼差しで見ながら佇む隼太を見る。彼もちらりとこちらを一瞥した。
「母さんを送った」
その言葉が、しばらく頭の中で意味をなさなかった。磨理を、送った。それはつまり。つまり……。奈苗が身を乗り出した。
「浄土に。そう言うこと!?」
隼太は無言で頷く。私は堪らず、泣き崩れる大海に手を伸ばし、抱き締めた。大海は縋りついて来る。
「なぜ、そんなことを」
由宇も呆然としている。
「母さんと大海の為だ。いつまでも歪な関係を続けるのには、無理がある。また、母さんの霊体が、いつ再び椎名たちに利用されないとも限らない」
隼太の言葉は理路整然としていて、テキストを読み上げるように完璧だった。
――――完璧でいられないのが、人の情だ。私は大海を置いて立ち上がり、隼太の頬を打った。隼太に何ら堪えた様子はなく、変わらず平然としている。私は震える息を吸う。
「聖さん、何か飲む物を」
「はい」
再び、私は大海を抱く。大海の涙と鼻水で、着物はぐしょぐしょだ。しかし、そんなことは些末事だった。聖が常温の林檎ジュースを持って来てくれた。私は、それを赤ん坊に接するような慎重さで、大海の口元に宛がう。大海は何口か飲んで、すぐに嘔吐した。撫子たちがその始末をしてくれる。
「眠」
処方したコトノハを、大海は服用した。急に脱力した身体の重みが、全て私にのしかかる。磨理。解っていて、隼太の案を呑んだのか。隼太と、大海の為を思い、もう二度と彼らに逢えない道を選択した。摩耶がすぐに床を用意してくれて、私は男性陣の手を借りて大海を横たえた。
「……可哀そうに」
「既に死んでいた魂だ」
「私が可哀そうと言ったのは、大海さんたちだけではありません。隼太さん、貴方もです」
「何だと?」
「解りませんか。貴方は、母の胸で憩う時間を、もうこの先一生、失ったのですよ」
「必要ない」
そうだろう。そう言い切ってしまえるのが、本気で言ってしまえるのが隼太だろう。私は、眠る大海の涙の跡を拭いた。
「隼太さん。貴方は強過ぎて哀れです」
隼太の身体から殺気が噴出する。
「俺を哀れむな。殺すぞ」
「やってごらんなさい」
この件に関して、私は一歩も退く積もりがなかった。大海に二度の絶望を味わわせた。隼太に対する、如何ともし難い憤りがあった。
「まあまあ、こと様。寝てる人の傍ですし」
芳江が取り成しに掛かる。彼とて隼太に対し、思うところがない訳ではない筈だが、今は緩衝材の役割を買って出てくれている。私は、大海の傍に端座した。摩耶が絞ったタオルで着物を拭いてくれる。有り難い。こんな風に、私は助けられている。私の胸一存ですることを、皆がサポートしてくれる。
「私は、大海さんが目覚めるまでここにいます。皆さんは、どうぞ退室されてください」
皆の物言いたげな目。とりわけ紅玉の。けれど、私はそれらを振り切った。今は、彼の魂こそが瀕死であろう大海についていてやりたかった。
寛容な方だけGО!
隼太「……」
こと「……」
芳江「……」
隼太「何だこの茶番は」
芳江「『美食牢』のほうで、後書きでキャラがわきゃわきゃしてるさかい、こっちでも、いう趣旨やそうやけど……」
こと「KYにも程がありますね。今、そういう状況ですか、うちは」
芳江「そないなこと俺に言われましても……。何で俺がこの二人に挟まれるんや!」
隼太「酒はないのか」
芳江「はい?」
隼太「俺たちは客だろう。もてなせ」
こと「この期に及んで飲酒ですか。よくもそんなことができますね」
芳江「はいはい!越乃寒梅と裂きイカがありますぅ~助けて撫子~~~~」
こと「芳江さん。この男に追従してはいけません」
芳江「いや、せやかて緩和剤があらへんと、ここの空気持ちませんで」
聖「……」
芳江「聖様ー!!いらしたんやったら早く言うてください、空気にならんといて!?」
聖「こと様がこわか、ご傷心であられるから」
隼太「お前、恐妻家だな」
聖「元はと言えば隼太君が原因だろう…酒を呷るな」
芳江「聖様も飲まはります?美味しいですよ、林檎ジュース」
聖「うん」
隼太「お子様……」
芳江「ストップ、ストップ、こと様ー!!!!一升瓶で殴ればえらい鈍器になりますからさすがに!!なんなんもう、全然、わきゃわきゃならへんやん、俺が大変なだけやんか九藤のアホ!!」
『美食牢』もどうぞ~。空腹時にはお避けくださーい。




