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コトノハ薬局  作者: 九藤 朋
神代ひもろぎ編 第三章
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ブルーベリーヨーグルト

 術師の念において、死後にも尚、凝り固まりこの世に留まる場合がある。椎名たちと接する長老らはこの例である。掴みどころがなく、神出鬼没。しかし、拠点とする日本家屋にはしばしば出没する。今も長老の一人が、一室に降り、端座していた。

「おじーいちゃん。何、考えてんの?」

「椎名。音ノ瀬大海は、予想を上回り使えそうじゃな」

「そだね。俺もびっくり。あそこまでとは思わなかった」

「いつ、霊水を含ませる?」

「もう食事に混ぜ込んでるよ。時間の問題」

 長老が、歯茎を見せて笑う。

「ほんにお前は抜かりがない」

「褒めてるの?」

「無論じゃ」

 長老は枯れ木のような腕を伸ばし、椎名の髪をわしゃわしゃと撫でた。

「伊勢は黙ってるね」

 撫でられ、乱れた髪を椎名が整える。

「そうじゃな。あれも心中、複雑なのじゃろうて。いずれ、音ノ瀬にぶつかってもらうかもしれぬでな」

「獅子身中の虫になる可能性は?」

 長老の濁った瞳がぎらりと動き、椎名を捉えた。

「あるさ。お前と同じくな」


 今日も暑い。冷房を各部屋、入れまくりである。正直、電気料金が怖い。由宇と私が体調を崩した。酷暑の報いだろう。由宇は奈苗の看病を受けている。なるべく、二人きりにしておいてやるよう、皆には言ってある。そうして私の部屋には、聖やかささぎ、楓、撫子、摩耶などなどが入れ代わり立ち代わり訪れる。家の主として、一族当主として、また宗主としても不甲斐なく面目ない。楓が、甲斐甲斐しく硝子鉢にヨーグルトを入れ、その上にブルーベリージャムを掛けたものを持って来てくれる。口が甘酸っぱさにさっぱりする。浴衣の襟元を整えて、楓に礼を言う。そんな中、俊介がうちに来た。床に半身を起こした浴衣姿で、彼を迎える。傍には聖がいる。私が床に臥してからほぼつきっきりだ。俊介に対する物腰は柔らかく、棘はない。俊介が、まず見舞いを述べてから切り出した。

「上賀茂に、椎名たちが住まっていそうな家があります。古びた日本家屋です」

 私と聖は視線を合わせる。術師の拠点がついに突き止められた。そう考えて良いのだろうか。上賀茂神社の付近は、社家が多く、由緒ある建物も密集している。閑静で風情ある住宅街である。

「隼太さんを呼んで来てください」

「もういる」

 いつの間にか隼太が、部屋の戸を開けて立っていた。

「そこの探偵が来たと言うことは、進展があったのだろうと思ってな。上賀茂か。詳しい住所は判るか」

「はい」

 俊介が携帯の画面を操作して隼太に見せる。隼太が双眸を細めた。

「行ってくる」

 ふらっと散歩にでも行くような口振りに、呆れる。

「単独行動は無謀ですよ。貴方も虜囚とされて終わりです」

「では人数を寄越せ。出来るだけ、隠密行動に向いた奴が良い」

 柔軟な思考は、隼太が決して愚かではないことを物語る。さて、誰を向かわせるか。由宇が万全であれば行って欲しいところだが、生憎、今は床にある。私も今は動けない。

「麒麟さんに相談します。くれぐれも早まらないでくださいね」

 隼太は黙って顎を引き、了承の意を示した。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 遂に椎名たちの牙城へと潜入か!? いや隼太の場合は襲撃の間違いか……。 [一言] 長老たちの妖気と淀みがこれ以上ないほど伝わってきました。
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