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コトノハ薬局  作者: 九藤 朋
乱刃血縁編 第六章
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それでも朝がやって来る

 朝だ。朝が来た。

 私は布団の上でゴロゴロと転がる。最近、皆が甘やかしてくれるからか、些か怠惰である。コトノハ薬局こそ再開したものの、家事全般を撫子たちに任せてしまっている。初夏の早朝の空気が室内に滞留し、ひんやり私を撫でて行く。楓たちは起きただろうか。

 起きているかもしれない。起きていないかもしれない。ふよふよと薄い埃が私の顔の上を舞うので、私はふう、と息を吹きかけた。時間を持て余すと、碌な考えに至らないと解っていると言うのに、起きて何かをしようと言う意欲もなく、無駄に布団と仲良くしている。揺り返しかな。体調と気持ちが落ち着いたから、逆に悲哀のほうから寄って来る。

「…………」

 のっそりと起き上がって、浴衣を脱ぎ捨てる。こんな時は一張羅で決めるのが良い。加賀友禅など纏って、気分を高揚させようと目論見る。後、少年漫画を読んだり。戦闘シーンなどを見ると、こちらもしゃっきりする。ような気がする。台所に行くと聖と楓と撫子と摩耶がもう立ち働いていた。客間に景が所在なさげに座っている。恐らく摩耶に台所から追い払われたのだろうと思われる。私を見るとふい、と視線を逸らす。

「おはようございます」

 皆に挨拶すると、景以外は挨拶を返してくれた。そして私も台所から追い遣られる。景の正面に座る。我ら同士である。しかしそう考えるのは私だけのようで、景は気難しい表情を崩さない。

「今日は良い天気ですね」

「会話のない人間同士だと自然、天候の話になると聴いた」

 取り付く島もないな。私は撫子たちの邪魔にならないよう、湯を沸かして薄めの緑茶を淹れ、景と自分の前に置いた。

「どうぞ」

 摩耶が見てる。私と言うより景を見張っている感じだ。信用がないのだな。景は湯呑みを手に取り、口をつけた。

「今日の午後は、家を見てみましょうか」

「家?」

「貴方と摩耶さんの新居ですよ。近所でも売りに出ている物件がありますから」

「……摩耶さんがどう思うかまだ解らない」

「お任せしますと言っていました。ですから、摩耶さんとも一緒に行きましょう」

 景の頬がうっすら紅潮している。

 私はのんびり緑茶を飲みながら続けた。

「その前に結婚式ですかねえ」

「まだプロポーズしていない」

 おやおや。私は声を潜める。

「指輪なら良い宝飾店を紹介しますよ」

 景は、ああ、とか、うん、とか言って、目が落ち着かない。若いなあ。にやにやしてしまう。その内、朝食が出来たと声が掛かり、未だ寝ている顔を起こして来るよう頼まれ、私と景は腰を上げた。



明日も開局する予定です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 景は子供ですね( ´艸`)
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