表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コトノハ薬局  作者: 九藤 朋
乱刃血縁編 第六章
705/817

糸はピンと頬はぷくりと

 見えない糸がピンと張ったような緊張感がある。日々これ戦いである。私は完全に床上げし、日常の生活に戻った。それでも撫子たちは私を気遣いながら、家事を余りさせてくれない。

「もーちゃんと遊んだってください」

 そう言って台所から追い遣られる。遺憾である。ぽよぽよしたもーちゃんを抱っこして、することもなく縁側に座る。かささぎが来て、話し相手をしてくれる。これは悪くない。今日は冷える。関東では数日前、観測史上でも早い真夏日を記録したそうだが、ここ最近の気候はどうなっている。そんな話をしながら時間を過ごすのは贅沢だ。

「聖さんは?」

「芳江さんと買い物に出ています」

「なら安心だね」

 すると私の携帯が鳴る。

「もしもし」

『国産牛ロース三百グラムが特売されていますがどうしましょうか』

「消費期限は」

『明日まで』

 私の脳裏にふくよかでたくましい筋肉を持つ撫子の姿が浮かぶ。

「十パック買ってください」

『解りました』

「ああ、それから、わさび味の柿の種も一緒に」

『はい』

 シニア携帯なら使えるんだよな、聖。国産牛かあ。カレーにするか、ステーキにするか。思わず生唾を呑む。

 痛みがこのようにして鈍麻していく。私はかささぎの頭をよしよしと撫でた。

「な、何、姉さん」

「かささぎさんは可愛いなあと思いまして」

「俺、男だけど」

「目に入れても痛くない弟ですよ」

 私はにこにこしてしまう。楓は今日、学校だ。楓もまた、目に入れても痛くない。私は愛する者が多い。欲張りは、駄目だろうか。そんなことをかささぎに問いかけると、笑われた。

「みんなが姉さんのこと好きだからさ。景君だって、今ではほだされてるよ」

「そうでしょうか」

 もーちゃんがその通りだとでも言うように、身体をすりすり擦りつけてきて可愛い。釣忍が鳴り、月桃香が匂う。聖たちがもうすぐ帰宅すると風が知らせる。

 風はアーサーたちや白夕らの動向も知らせてくれる。彼らは私の快復を待ってくれていたのだろうか。いや、不可抗力だろう。ふるさとにまで行く術を持たなかっただけの話だ、きっと。

 私はそれからかささぎとソリティアをやって、三個の差で勝った。もう一度、の勝負を三度挑まれ、三勝したので、かささぎの頬はぷくりと膨れた。ああ、可愛い奴だなあ、もう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ