時よ止まれ
ふるさとまでは、秀一郎が車で送ってくれた。飛ぶことも出来たが、やはりそれは乱暴なので、私は秀一郎の厚意に甘えた。かささぎと聖と楓も一緒で、車はぎゅうぎゅう詰めだ。やがて見慣れた竹林に至る。
竹の葉擦れは、今日も優しい。かささぎが、きょろきょろと、物珍しそうにあたりを見渡している。私は彼の腕に腕を絡ませて、寺の境内に誘った。生憎、空は曇り、春雨を落とそうかと言わんばかり。吹く風はそれでも清涼で、私は両親たちの眠る場所に、かささぎたちと身を屈めた。皆が合図でもしたかのように、手を合わせる。父は、今頃、ばつの悪い思いをしているだろうか。瞑目していたかささぎが目を開けた。
「本当に俺が来て良かったの」
「寧ろ、来てはいけない理由がありません」
かささぎは俯き、何か言いかけた言葉を呑んだようだ。
「お茶を淹れます。縁側にどうぞ」
聖の声で、私たちは寺の縁側に腰を落ち着けた。やがて、聖が盆に翡翠の茶の入った湯呑みを載せて、運んでくれる。花びら餅が添えられていて、私たちは談笑しながらそれらを賞味した。聖が、物言いたげな視線を向ける。解っていて、私はそれを無視した。彼は勘づいているのだろうか。この中で、最も多く、私と時間を過ごした相手だ。秀一郎は何も言わない。私たちが墓参をしている間も、彼は後方で静かに控えていた。私は、翡翠の湖面に映る自分の顔を見る。随分とまあ、満ち足りた表情だ。
音ノ瀬こと。
お前は幸せだったかい。
そう問えば、躊躇いなく頷く私がいるだろう。
だから、私はもう十分だった。
ことの、透き通るような儚い存在感を、聖は危機感を持って観察していた。なぜ、こんなに、と訝しむ思いで。秀一郎も少なからずそうだっただろう。
だから、ことの姿が忽然と消えた時も、驚愕しながら、どこかで腑に落ちる自分を聖は自覚した。




