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コトノハ薬局  作者: 九藤 朋
乱刃血縁編 第六章
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時よ止まれ

 ふるさとまでは、秀一郎が車で送ってくれた。飛ぶことも出来たが、やはりそれは乱暴なので、私は秀一郎の厚意に甘えた。かささぎと聖と楓も一緒で、車はぎゅうぎゅう詰めだ。やがて見慣れた竹林に至る。

 竹の葉擦れは、今日も優しい。かささぎが、きょろきょろと、物珍しそうにあたりを見渡している。私は彼の腕に腕を絡ませて、寺の境内に誘った。生憎、空は曇り、春雨を落とそうかと言わんばかり。吹く風はそれでも清涼で、私は両親たちの眠る場所に、かささぎたちと身を屈めた。皆が合図でもしたかのように、手を合わせる。父は、今頃、ばつの悪い思いをしているだろうか。瞑目していたかささぎが目を開けた。

「本当に俺が来て良かったの」

「寧ろ、来てはいけない理由がありません」

 かささぎは俯き、何か言いかけた言葉を呑んだようだ。

「お茶を淹れます。縁側にどうぞ」

 聖の声で、私たちは寺の縁側に腰を落ち着けた。やがて、聖が盆に翡翠の茶の入った湯呑みを載せて、運んでくれる。花びら餅が添えられていて、私たちは談笑しながらそれらを賞味した。聖が、物言いたげな視線を向ける。解っていて、私はそれを無視した。彼は勘づいているのだろうか。この中で、最も多く、私と時間を過ごした相手だ。秀一郎は何も言わない。私たちが墓参をしている間も、彼は後方で静かに控えていた。私は、翡翠の湖面に映る自分の顔を見る。随分とまあ、満ち足りた表情だ。


 音ノ瀬こと。

 お前は幸せだったかい。


 そう問えば、躊躇いなく頷く私がいるだろう。

 だから、私はもう十分だった。


 ことの、透き通るような儚い存在感を、聖は危機感を持って観察していた。なぜ、こんなに、と訝しむ思いで。秀一郎も少なからずそうだっただろう。


 だから、ことの姿が忽然と消えた時も、驚愕しながら、どこかで腑に落ちる自分を聖は自覚した。



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