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コトノハ薬局  作者: 九藤 朋
乱刃血縁編 第四章
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どんぐりとダイヤモンド

 小雨に濡れながら、二人の男が対峙する。

「白いコートは良いのか」

「ハンデをくれてやる」

 恭司にとっては、正直、助かる話だ。コトノハを無効化するコートがあっては、戦い辛いのは確かなのだ。徒手空拳の隼太相手に、躊躇わず抜刀する。

(ばく)

(かい)

 恭司は右の手一本の構えを見せた。

 即ち、右手に刀を、左手はだらりと下げる。隼太が眉を微かに動かした。

(せつ)

(へき)

 恭司が刀を振りかざす。隼太がその間合いから出るところを、させじと追撃する。紫陽花色のコートを刃がかすめた。

「氷華輪舞」

 恭司の刀の鞘から氷の小花が弾け飛ぶ。それらはてんでばらばらに隼太を急襲した。

(えん)(ぼう)

 隼太のコトノハにより、隼太の前面に半円状の膜が生じて氷の華を防いだ。息つく間もなく、恭司が隼太の横脇腹を狙い回し蹴りを放つ。隼太は左腕でガードして右拳を繰り出す。恭司の整った顔の頬が切れる。その、形の良い唇がコトノハを処方した。

「どんぐりころころどんぐりこ」

 場に似つかわしくない童歌。焦げ茶色の礫が隼太の頭上から降ってくる。空地に生えていた(しい)の大樹から落下したものだ。

金剛石(こんごうせき)は虫も喰わない」

 次は隼太がコトノハを処方する。恭司の身体に、とてつもなく固い何かで殴られたようなダメージが掛かった。数メートル吹っ飛び、倒れそうになるのを堪えて構える。

「だいぶ、鍛えられたな」

「お陰様で」

 金剛石のコトノハは、隼太が恭司に無理矢理に服用させたものだ。恭司はコトノハの作用により、〝自ら〟吹っ飛んだ。処方を服用させる能力には個人差がある。隼太の能力は相当に高かった。ことに鍛えられていなければ、今のでダウンしていただろう。恭司はとん、と地面を蹴り、高く跳躍した。持ち前の運動神経の良さは隼太をも凌駕する。隼太の頭上から刀を繰り出す。狙ったのは肩。刃は浅く隼太の肉を抉った。恭司が着地する地点を読んで、隼太が上段蹴りを放つ。恭司はこれを避け、隼太の後ろに回った。無防備そうでいて隙のない背中を狙う。

(ぼう)

「無駄だ」

 恭司は、紫陽花色のコートの布地だけを、真一文字に斬った。薄皮一枚、隼太の身体に触れなかった。

 隼太の動きが止まった。恭司は荒く息をしている。

 勝敗は決した。



恭司、成長しました。

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