表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コトノハ薬局  作者: 九藤 朋
乱刃血縁編 第四章
627/817

シャンパンゴールド

 ホテルのロビーで優雅に寛ぐ隼太を見て、恭司は脱力しそうになった。テーブルには琥珀色が入ったグラス。昼からシャンパンを飲んでいるらしい。彼の向かいのソファーに荒っぽく腰掛ける。隼太が恭司をちらりと見て、グラスに手を伸ばした。その手を掴む。

「やっと見つけた」

「時間を喰ったな?」

「捜し回ったから」

 隼太は、恭司に掴まれているのが不快だとばかりに、手を外させ、おもむろにシャンパンを飲んだ。和製天使の顔に険が宿る。

「何の用だ」

「かささぎさんを殺すな。彼が来ても相手にせず、逃げろ」

 くっっくっ、と隼太が咽喉の奥で笑った。

「それに従わねばならない道理が俺にはない」

「そうだろうな。俺の知るお前なら、そう言うんだろう」

 恭司は、グラスの中、上へ上へと昇るシャンパンの小さな泡を見つめた。

「だから、俺と仕合えよ。隼太」

「何?」

「俺が勝ったならかささぎさんを殺さないように努めろ」

「その賭けはフェアじゃないな。俺が勝っても得るものがない」

「隠れ山への、コトノハ遣いの流入を俺が引き受ける」

「…………」

「お前は音ノ瀬を敵に回した。これまでのように花屋敷や隠れ山には足を運べないだろう。でも、アジールとして使いたい気持ちは変わらない。だから、俺がお前の代行を務めてやる」

「少しは考えるようになったな。小僧が」

 隼太がシャンパンを飲み干し、ロビーの天井に下がる繊細なシャンデリアを見上げる。思案は数秒。

「良いだろう。近くに手頃な空き地がある」

 そこで仕合う、という意味だ。恭司は頷いた。大海は来るだろうか。そう考えた恭司に、読んだかのように隼太が告げる。

「大海には知らせない。大仰に騒がれても煩いしな」

 隼太が立つと紫陽花色が揺らめいた。恭司は先を行く彼の背中を見つめる。外は冷えていた。小雨がぱらついている。夜には雪になるかもしれないと天気予報では言っていた。アスファルトが小雨を弾く。歩道をしばらく歩くと目抜き通りに出て、更に行くと人気のない、寂しい通りに出た。私有地と書かれた立て札のある空地が、ぽっかり空いている。恭司は隠刀に手を添える。小雨は相変わらずだが、隼太も恭司も、傘の存在を忘れたかのように振舞う。空地には雑草がちらほら生えていた。恭司が隠刀を顕現させる。隼太が真っ直ぐ、恭司の顔を見据えた。



恭司の挑戦。彼の踏ん張りどころです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ