電気毛布
ああ、いたいた。あの白髪の三つ編みは良い目印だ。
「とう!」
ごいん、と、小気味いい音がした。
「いったああい! 何するんですか、ことさん」
いい歳して可愛い子ぶりやがって。
「よくも人の夢を好き勝手してくれましたねえええええ、師匠」
「師匠を付け足した! そして微塵も敬意が感じられないっ」
「やかましいわっ」
客間に電気毛布を出してぬくぬくしていた劉鳴殿の三つ編みをここぞと引っ張る。蜜柑の皮が散らかっている。子供か。
「警告、ですよ」
不意に声調が変わる。ひやりと冷たく。
「かささぎ君を守ると、僕はそう約束しました。そうであっては、ことさんに余り甘ちゃんになられるとやりにくいのです。攻めるは最大の防御と、昔にも教えた筈ですがいたたたあ、ピアス引っ張るのやめてえええ」
「あー、あー、そうですね! 私は不肖の弟子ですから」
「痛い痛い痛い、芳江君、こっそり見なかったことにして通り過ぎようとしないでえ」
芳江がぎくりと足を止める。そろりと振り向く花のかんばせ。男がそうも美人でどうすると言うのだ。八つ当たり気味に私は思う。
「いやー。師弟水入らずを邪魔したらあかん思いまして」
えへへ、と笑う。着膨れしているので美人も半減ではある。劉鳴殿がその背後にささっと回り込む。
「さ、芳江君、いっけええええ」
「俺を盾にせんといてください、そしてそないなパクリはあきません!」
私はにっこり笑う。なぜか芳江の顔が引きつった。
「さ、悪いことは言いません。後ろの白いのを引き渡してください。芳江さん」
「やあ、目が合うてしもたんで」
「僕は捨てられた子犬ですか」
「そんな可愛いもんじゃないでしょう」
「あだだだだ」
「いたあ、ちょお、俺にまでとばっちり来てますやん、劉鳴さん、後ろから出てください」
「やーだ。ことさん、あっかんべーだ」
「……さらそうじゅの」
「こと様、それそない安売りしたらあかんやつううう」
「そうですよことさん、大人気ないですよ」
ぎゃーぎゃーと収集がつかない。やがて聖とかささぎが呆れ顔で仲裁に入るまで、この騒ぎは続いたのだった。
レビュー、評価、ブクマありがとうございます。
賑やかな回になりました。
劉鳴は子供っぽい大人です。




