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コトノハ薬局  作者: 九藤 朋
乱刃血縁編 第四章
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サンタクロースは沈黙する

 うちの界隈は住宅街だが、比較的裕福で且つ凝り性の家が多く、毎年、この時期になると庭や家を趣向を凝らしたイルミネーションで飾り立てる。私と聖、楓とかささぎは夕暮れ、冷えないように着込んでそれらを見て回った。かささぎは久し振りの外出に晴れやかな顔をしている。こんな機会でもなければ家から出してやれないことを不憫に思う。撫子たちも誘ったのだが、家族水入らずで、と遠慮されてしまった。まあ、撫子と芳江にしろ、水谷と二条にしろ、二人で行くほうが何かと雰囲気が盛り上がって良いだろう。

 最近、恭司を見ない。隼太を捜し回っているらしい。彼なりに責任を感じているのだろうが、楓は口にこそ出さないものの、寂しそうだ。彼女の護衛の為にも、恭司にはうちに来てくれたほうが好都合なのだが。

 ライトアップされたイルミネーションには、キャラクターものや、二階に上がろうとしているサンタクロースの、等身大の人形に巻き付けたものまであって、どれも気合いが入っている。

「うちではしないの?」

 楓の無邪気な問いに笑う。

「したいですか?」

 楓が望むなら一考の余地はある。普段は情緒や風情を重んじるのが我が家流だが、たまにはしゃいでも良いだろう。

「うーん。もーちゃんがいるからいっかあ」

 この発言の真意を私はよく汲み取れない。イルミネーションの代わりがもーちゃんに務まるのか、はたまた、まさかもーちゃんにイルミネーションを巻き付けてライトアップでもする積もりなのか。後者だとちょっと止めなくてはならない。

「クリスマスツリーはないの?」

 笑み含む声で、今度はかささぎが尋ねる。

「確か小さい物が、どこかに奥直しされていた筈……」

「楓ちゃんもいるんだしさ、この際、大きいの買ったら?」

 買って、一緒に飾り付けして。ケーキやチキンを食べて団欒すれば、かささぎは復讐心を捨ててくれるだろうか。うちにいてくれるのだろうか。それがかなわなくても、或いは、ふるさとの寺に。

「では、今度また皆で一緒に買いに行きましょう」

 それは願掛けのようなコトノハだった。私はかささぎを繋ぎ止めておきたかった。弟を手放したくなかった。だから自己中心的に、彼を約束で縛ろうとする。かささぎは、そうでもしないと飛び立ってしまいそうで怖い。

 果たして彼は素直にうん、と頷いた。その躊躇いのなさが、却って彼の本意を知らせた。


 かささぎは諦めていない。

 今、この瞬間にも彼の心は復讐の(おき)()で燃えている。


 私はそのことが無性に悲しかった。聖はこれらの会話に口を挟まず、終始、沈黙していた。そこに私は彼なりの覚悟を見て取った。



口を開けば「寒い」しか出ません。

語彙の乏しくなっている九藤です。

ちなみに作中のイルミネーションの様子は

我が家近所の毎年恒例です。

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