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コトノハ薬局  作者: 九藤 朋
乱刃血縁編 第三章
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ドリーマー

 私は久し振りに聖と同じ寝室にいた。彼の肩に頭をもたれかけてぼう、としている。右手は無意識に左手首のブレスレットを触っていた。金色に、ローズカットのダイヤが照明を受けて輝く。聖の横顔を眺めていると、それだけで落ち着くものがあった。雪の庇がゆるりと動く。

「こと様。提案なのですが」

「はい」

「かささぎ君に副つ家を継いでもらうのはどうでしょう」

「それは……」

「彼に務まるものかは判りませんし、難しいようであれば能力のある女性と結婚する法もありです。音ノ瀬現当主の弟が副つ家の主となれば納まりも良いですし、それであればかささぎ君がこの家に共に暮らす状況も是認されます。只、その分、楓さんに掛かる負荷は増します。次代の当主候補として、改めて一族から目されることでしょう。しかしそれはそれで、いずれ楓さんが他の将来を望むようであれば、また別の後継者を見つければ良いのです。要は、かささぎ君と僕たちが共に暮らせる環境が、最も肝要だという次第で」

 聖の提案は、これ以上なく妥当なものだった。私は、しかし怯んだ。かささぎと楓と聖と、皆一緒に暮らす。そんな幸福が許されて良いのだろうか。父はかささぎを捨てたのだ。かささぎの性分によっては、私を憎んでもおかしくない状況だった。幸いにしてあの子は優しい子だったから、私を姉と真っ直ぐに慕ってくれる。虫のすだく音が聴こえる。かささぎも聴いているだろうか。

「問題は、隼太さんですね」

「はい。かささぎ君は、音ノ瀬隼太を許さないでしょう。この家を出て彼を捜し復讐しようとする可能性は大いにあり得ます」

「コトノハを吸収するコートは隼太さんが持ち去りました。分は恐らく隼太さんにある。大海さんもいることですし。大海さんは身命を投げ打ってでも隼太さんを守ろうとするでしょう」

 私は、頭を起こして布団を引っ張り上げた。柔らかく滑らかな弾力に甘える。

「師匠がかささぎさんを守ると公言してくれました」

「はい。僥倖ですが、楓さんの守りも疎かには出来ませんね。こと様のアキレス腱です」

 懸案事項が次から次へと降ってくる。私は溜息を吐いた。

 ともあれ、聖の提案は採用しようと思う。

 かささぎ。

 私に夢を見させて。一家団欒の優しい夢を。

 例えそれが私のエゴだとしても。



ことさんは、家族の温もりに飢えているのだろうなあと思います。

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