表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コトノハ薬局  作者: 九藤 朋
乱刃血縁編 第二章
563/817

砂糖を少し

 かささぎは音ノ瀬玲一の自宅にいる。

 ことはその事実を玲一自らより聴き知っているだろう。かたたとらコーポレーションはまだ掴んでいないであろう事実。

 隼太はさて、と新聞を流し読みしながら思案する。大海が淹れたコーヒーを冷めない内に飲みながら、あれこれと未来を予測し最良の一手を模索する。かささぎは殺しておいたほうが隼太にとっては都合が良いが、彼は堅牢な檻に入ってしまった。流石の隼太も、玲一、そして藤一郎始めとした三兄弟まとめての相手は無理がある。

 なぜ、隼太がかささぎの殺害にこうも躍起になるか。都合が悪いからだ。隼太は楓と恭司が添う未来を望んでいる。己が利の為に。しかしそこにかささぎがいては計画に支障をきたす。

 かささぎがかたたとらコーポレーションにいなくとも、隼太は動いただろう。そこにはことに対する情はない。その筈だった。だが、かたたとらコーポレーションにいるかささぎの素性を知って気に障ったのは、癪なことに、ことへの同情があったからだと認めざるを得ない。あれはかささぎを殺せない。だから自分が殺してやろうと思った。ことに、後に恨まれても別段どうと言うことはない。

「コーヒーはブラックですか」

 白夕が尋ねたので鷹揚に頷いておく。今、隼太のいるマンションのリビングには隼太と大海、白夕とさだめがいる。それぞれ向かい合う形でソファーに座る。

「あ、お砂糖とミルク、欲しかった?」

 呑気に尋ねたのは大海だ。白夕はふ、と笑う。

「私はブラックで良いのですが、さだめには砂糖を少しやってくれませんか」

 白夕は、今日は薄い水色の単衣である。さだめはやや不興の顔つきで大海からシュガーポットを受け取った。

「かささぎの行方が昨夜より知れません」

「そうか。風邪でもひいて寝込んでるんじゃないか? 最近は冷えてきたからな」

 隼太はそっけなくそう言ったが、白夕は無表情で続く言葉を紡いだ。

「風邪の原因は貴方ですか」

「試合ったんだろう、奴と」

 さだめも急くように訊いてくる。コーヒーには砂糖を小匙二杯入れていた。ぐるぐる、カップの中を掻き回してぐい、と飲む。

「ああ。だが邪魔が入った」

 あっさり認める。

「邪魔……」

「音ノ瀬玲一だ。お前の、」

 そう言ってさだめに向けて顎をしゃくる。

「じいさんの兄の息子だ。コトノハの使い手としては一族でも屈指だ」

「では、かささぎは今」

「玲一の自宅だ。玲一自身が連れ帰った」

 があ、とそれまで大人しく隼太の肩に留まっていた烏の隼太が鳴いた。黒い羽は艶々として、まさに濡れ羽色である。つぶらな瞳は男たちの話を興味深く聴いている風でもある。

「なぜ私たちを呼んだのですか?」

「提案がある」

「聴きましょう」

「手を組まないか? 俺はお宅らの邪魔をしない。代わりにそっちも俺の〝かささぎ狩り〟の邪魔をしない、と」

 白夕が儚い面持ちに更に白い花びらをひとひらもふたひらも重ねた風情で考える。さだめは大人しくコーヒーを飲む。白夕に一存するということだろう。よく慣らされている、と他人事の冷たさで隼太は思う。

 やがて白夕からの返答を聴き、白夕とさだめを送り出そうとしたところで、それまで黙っていた大海が割って入った。

「今日は冷えるし、蕎麦でも食べて行きなよ。とろろもあるよ。海苔を乗せて、うん、卵の黄身や葱も乗せよう。美味しいよ」

 にこにこ笑いながら白夕だちを誘う。

「もしも隼太に害を及ぼすようなことがあったら、僕は君たちを許さないから」

 笑顔のままで告げる大海に、隼太はそうと明らかに知れない程度に眉間に皺を寄せ、白夕は微苦笑して、その儚い花が綻ぶような様を見せた。



ブクマありがとうございます。

不定期更新になりそうです。すみません~。

なるべく週末の更新は欠かさないようにします。

そして今の季節が把握できていない九藤です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ