表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コトノハ薬局  作者: 九藤 朋
乱刃血縁編 第一章
525/817

命の歌

 白夕の話は、隼太から電話で聴いた。成程、〝裏の宗主〟。あの貫禄はそれゆえか。茄子の肉味噌挟みが殊の外、美味しい。おっと。美味に気を取られがちになるのは私の悪い癖だ。私は、まだ日が出ている内から、桃色に染められた客間で皆より先に一献、始めていた。茄子を調理したのは聖だ。

「やってますね」

 ふらりと、庭に現れる劉鳴殿。桃紅を背負って、白髪が僅かに染まっている。白髪染めみたいだ。

「毎度毎度、貴方はうちの庭にどうやって入り込むんですか」

「ことさん……。今、僕の髪を白髪染めで染めたようだと思ったでしょう」

「それはそれ、これはこれです」

「そうですか。思ったんですね」

 ふう、とわざとらしく嘆く溜息を吐きながら、劉鳴殿は勝手知ったる様子で縁側から上がり込む。今日は渋い、黒の単衣を着ている。引っ掛けているのは薄手の青いロングカーディガンだが、これが妙に様になるのが劉鳴殿だ。

「ゲソのフライもありますよ」

 ほれほれとばかりに、劉鳴殿が透明のパックを掲げる。夕方特売のシールがでかでかと貼られている。そしてそのまま私の向かいに座るので、私は渋々、彼の分の盃も用意した。

 来るだろうとは思っていた。風にコトノハを乗せて飛ばしたのは、他ならぬこの私だ。あむ、とフライに食いつきながら、劉鳴殿は実に美味しそうな表情をする。料理人冥利に尽きるだろう。

「白夕とはまた、風情のあるお名前ですねえ」

「呑気に言ってる場合ですか」

「もちろん呑気じゃありませんよ。飲んでますけどね。僕がやりましょう」

 一瞬、劉鳴殿の言葉を捉え損ねる。劉鳴殿は尚もフライにぱくつきながら言った。

「白夕は、僕が殺すと言ったのです」

「架橋さだめは……」

 くすり、と劉鳴殿が笑い、赤い瞳を酷薄に細める。

「おや。当代様はご自身の手を少しも汚したくないと」

 暗に、それは私の仕事だろうと告げる。私は黙って盃を傾けた。

 秋の虫が早くも歌い出す。命の歌を歌っている。

 死にたくないと鳴いている。



評価、ブクマありがとうございます。

エアコン要らずは良いですね。

ことさんちの近所のスーパーに奇人変人がうろうろしてると思うと

中々に愉快です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ