安売り特売
隼太は普段、スーパーで買い物などしない。まずスーパーに寄り付きもしない。家事全般は大海に任せてあり、行く必要もなかった。ならばなぜ、今、スーパーの総菜コーナーにいるのか。
ことのコトノハが気になったからである。逢魔が時。大海が指摘したように、足を運ぶのは些か癪だった。だが、あの時のことの声は、いつもに似合わず迷子のような心許なさがあった。それが隼太をここまで来させた。
隼太は弱い女というもの全体が嫌いであったが、日頃、強い女が弱っていると多少は気にかかる。安売り、特売を知らせる音楽と放送が流れるスーパーの喧騒は、隼太の好むところではなかった。別段、何か異変がある訳でもない。隼太は踵を返し、そこで足を止めた。
「あれ? 音ノ瀬隼太じゃん」
「知っているのですか、かささぎ」
「音ノ瀬隼人の孫だよ。さだめとは別の」
「ああ。貴方が……」
髪の毛が緩い天然パーマのかささぎと、対を為すような見事な長い直毛の、白い単衣の男は明らかにこの場において異質で、そしてそれは隼太にも言えることだった。これを見せたかったのか? 隼太はことの内心を測りかねた。
三人共に容姿が整っており、内、一人は着物姿である為、悪目立ちしている。まだ自力で歩けないような子供を抱いている、肥満気味の母親の視線が自分たちに釘付けなのは、気に喰わない。
「白夕と言います。さだめと暮らしております」
「じいさんの孫か。俺とはまた従兄弟だな」
興味ない。何の感慨も湧かなかった。但し、裏天響奥の韻流と関わっているとなれば、話は別だ。
「裏をさだめに伝授したのはお前か」
白夕の、切れ長の双眸が細くなる。浅く、顎を引く。それで隼太は全てを了承した。
「竜田揚げも良いけれどね」
「何?」
「厚揚げ豆腐も美味しいですよ。ここは」
そう言って、白夕は微笑した。
こいつは俺と伍する。いや、俺を殺すことも可能かもしれない。
隼太は、白夕の微笑を見てそう思った。
ブクマありがとうございます。
もう、すっかり秋の風ですね。コトノハではこちら世界より
少し季節が進行しています。




