光の花
私は聖の勧めで、夜は二人の寝室で寝るようになった。不測の事態に備えてのことだと、何も言われなくても私には解った。実際、熱を出して寝込んでいる時には、聖が傍にいてくれると心強い。こうしている間にも、少しずつ命が解け出しているのが判る。それは紺青の宵闇にゆらと消える月桃香のように儚く心許ない感覚だ。
夜、隣の布団に入る聖に尋ねる。
「聖さん」
「はい」
「私で良かったですか」
紅玉が微かに大きくなる。聖のように魅力的な男性であれば、もっと相応しい女性がいたのではないか。私は、聖の隣を歩くには、荷が大き過ぎる。横になり、尋ねた後、天井を向いた私に聖の表情は見えない。
「こと様がいたからこその、僕でした」
静かだが力強い声が響く。
「貴方は、雪原にいる僕に温もりを与えてくれる、小さな姫君でした。貴方がふるさとを訪れてくださる日々を、どれ程、待ち望んでいたことか。光を纏う花のように貴方は僕の前で咲いていてくれた。……こと様が、他の男を選んでいたら、僕は地獄に堕ちる思いを味わったでしょう。今、こと様は僕を選びそこにいてくださる。何より、それを至福と感じます」
なぜだろう。
特に耳を澄ましている訳でもないのに、外の音が鮮明に聴こえる。葉が舞い落ちる音。夜に鳴く鳥の声。吹く風の音。聖がそこまで想っていてくれただなんて、私は知らなかった。私はもぞ、と布団に潜った。子供のようだと自分でも思いながら。布団の上に優しい重みが加わる。なぜだろう。なぜ、この人は私を選んでくれたのだろう。理由を訊いても訊いても尚、疑問は尽きない。
「宝珠は必ず集めます。こと様を死なせはしません。そうなれば、僕の心も死ぬからです」
これを聴いた時、私の中に安堵するものがあった。聖は自分も死ぬとは言わなかった。心が死ぬと言った。即ち彼は、楓を遺してまで私の後を追う積りはないのだと、解ったからである。
ブクマありがとうございます。
切ないシーンが続きますが、次話から動きます。




