表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コトノハ薬局  作者: 九藤 朋
天響奥の韻流編 第二章
472/817

憂愁と優秀

 金の糸が迸る。鋭く、それは狙い違わず晃一郎に向けられた。

 晃一郎は本家への礼儀ということで、ノーカラーの紺色の麻ジャケットを着ていたが、その麻が数か所、弾けるように破れた。

 つい、と練り上げられた糸の一本を、藤一郎が人差し指の腹で撫でる。ふう、と笑い、藤一郎はアーサーたちに告げる。

「僕一人で君たちを相手取ることも可能だが、ここは可愛い弟に花を持たせよう。晃一郎。そちらは任せて良いかな?」

「無論」

 違和感を覚えたのはかささぎだ。藤一郎は敵の力を見誤る人物ではない。自分にまだ余力があることも知っているだろう。なのに、一人で自分とアーサーを相手取る? 思いついた想像に、かささぎは鳥肌立った。全力を投じていないのは、藤一郎も同じなのだ。つまりはまだ、力を温存していると。

 誰も彼もがモンスターに見えて嫌になる。だが事態は変わらない。ならば自分は藤一郎に注力し、アーサーに晃一郎を任せよう。晃一郎は、優男の長男より、父である玲一に似ている。男らしく整った精悍な顔立ち。アーサーが再度、糸を放つ。剛力にして切れることのまずない糸を、晃一郎は掴み取り、更には引き寄せるという裏技に出た。糸はそのものが凶器だ。肌を裂き肉を破る。ゆえに晃一郎の行為は、アーサーにとって驚天動地であった。

「弟君は大丈夫かい」

 こちらはこちらで命の遣り取りを藤一郎相手に続けるかささぎが、尋ねた。美しい微笑が返る。

「晃一郎は、僕ら三兄弟の中で最もコトノハの処方に長けていてね。心配するだけあいつに失礼というものさ」

 厄介だな、とかささぎは心中で独り言ちる。

 そこに事態の力関係を決定づける声が割り込んで来た。

「どもどもー。元・かたたとらコーポレーション庶務課の岡田でっす」

「……和久だ」

 かささぎとアーサーが、盛大な舌打ちをしたくなったのも無理はない話だった。



評価と3ブクマありがとうございます。

蝉の声がものすごいです。

夏ですね……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ