コーヒーにはミルクとシロップを
二条摩耶は柳眉を険しくひそめていた。そんな表情すら様になる。美人が怒るのは見ていて楽しいとかささぎは思う。彼にはその性癖が特殊なものだという自覚はなく、ごく一般論だと考えている。そうした感覚のズレもまた、二条がかささぎを敬遠する理由の一つだった。会議室に集まった面々は、かささぎや布帛の他にもアーサーなど異能持ちがほとんどだった。かたたとらコーポレーションの暗部。二条がいるのは堅田亡き後、開発部長に抜擢され幹部入りしたからだろう。
「なぜ一人も仕留められない?」
片桐の低い怒声を聴いて、ミルクとシロップを入れたコーヒーの黒い水面をぐるぐると掻き混ぜながら、そんなこと言われましてもねえ、とかささぎは呑気に胸中で反論する。
片桐自身は異能持ちではない、ごく普通の一般人だ。戦闘能力も皆無に等しい。だから、とかささぎは思う。
門外漢はすっこんでいろよ。
表面上はにこにこ笑顔でいるこの男の本心を察している人間は、この場では極めて少ないが、布帛などはその一人で、先程から暴れるなよと言った目線をかささぎに投げてくる。解ってるのに~、と子ども扱いされた気分で、かささぎは些かむくれる。片桐の憤懣混じりの問いに対して、相手のポテンシャルがどうとか、タイミングがどうとか、かささぎにとっては有象無象の輩がごちゃごちゃと言っていて片腹痛い。
「次は私も出ましょう」
「え、迷惑だから止めてください」
二条の意を決した発言に対するかささぎの言葉に、室内がざわついた。二条がきっ、とかささぎを睨む。
「足手まといにはなりません」
「ん~~~~。解ってないようだから言いますけど、お嬢さんが物の数秒、立っていられる戦場じゃないんですよ。俺らの仕事増やさないでって言ってんの。二・条・開・発・部・長」
「口が過ぎるぞ、かささぎ。水谷、落ち着け」
布帛が冷静にかささぎを窘めて、今にもナイフの柄を握りかささぎに投擲しようという姿勢をとった水谷に釘を刺す。そんな布帛だが、かささぎの言葉にはほぼ同調しているのが実情だった。二条は弱くはない。そこらの、〝普通の〟男相手なら軽くいなしてしまうだろう。だが相手は更にそのはるか上を行く。とりわけあの、音ノ瀬劉鳴。彼にかかれば二条の本気ですら児戯に等しくなるだろう。かささぎがコーヒーをぐいと一口飲む。甘いんだよ、みんな。余計な一言と知っているので、その言葉はコーヒーと一緒に吞み込んだ。
一日に二話書いた自分を褒めてやりたいくらいには
貧弱です。今日もそこそこ暑い日でした。
後半はクーラーをつけない時間もありました。
空調との折り合いを上手くつけていきたいです。




