墓石の前
ブクマありがとうございます。
一度頂いたレビューを削除されたことは痛恨事であり、
堪えましたが、それでも何とかこの薬局を続けたいと
思います。見守ってやってください。
いや、強がりですね。まだ、迷っています。
なろうを去ることも、コトノハを閉めることも、筆を置くことも
考えました。まだ迷いの中にいます。
侃々諤々(かんかんがくがく)の末、かたたとらコーポレーションに乗り込む顔触れは、私と聖、玲一と康醍、芳江と撫子、そして劉鳴殿、隼太に決まった。秀一郎らも同行を希望したのだが、余りだらだらと人数を引き連れては見るからに大仰だ。戦闘には発展しないだろうが、万一の場合にも備えた決定だった。撫子たちの存在は、空間接続において重宝だ。また、劉鳴殿の存在は言うまでもなく心強い。
明日香からは、結局何も聴き出せず仕舞いだった。
穏やかによく晴れた朝だった。少し肌寒いくらいに涼しい空気が身体を取り巻く。艶やかな青緑色の上等の大島紬に、大判の白銀のショールを合わせる。手回しの良い事に、うちの前の坂を下ると、かたたとらコーポレーションから遣された黒い車が三台、停まっていた。一台目の車には、専務の片桐が乗っている。
彼は私たちを一瞥して車を降りると、会釈し、自らドアを開けて私を促した。私もまた彼に会釈を返し、車内に乗り込む。聖と劉鳴殿が後に続いた。
「今日は良いお天気ですね」
動き出した車内で、一見、和やかな言葉が生まれる。劉鳴殿に対して、片桐がくすりと笑った。
「そう言いながら死んだ作家がいたそうですよ」
「夢野久作かな」
「よくご存じで。しかし社長も私も、この車を一方通行にする積りはありませんよ。帰りもきちんとお送りする所存です」
「そのお言葉通りになれば望ましいですね」
「小金井さんはうちで休んでいますよ。熱があるので」
私が二人の会話に割って入ると、片桐が鷹揚に頷いた。
「ありがとうございます」
「いえ、しかし隼太さんへの謝罪は必要でしょうね」
「必要と不必要は人それぞれですから」
婉曲に拒否される。やれやれ。隼太もそれでは溜飲が下がるまい。運転手の腕が良いのだろう。車は滑らかに進み続け、やがてかたたとらコーポレーションの門前で停車した。巨大なビルには流石の威容がある。こちらを見下ろすような直方体を見て、大きな墓石のようだとも私は思った。




