白味噌か赤味噌か合わせ味噌か
雲行きが怪しくなってきた。さてここが思案のしどころ。
「夜半の夜叉衆を結成しますかね」
私の呟きを耳聡く聖が拾う。彼は今、茄子を輪切りしていた。そうしたものをオリーブオイルとバジルソースで炒めるのだ。コツはじっくり油を浸透させること。
「やはりそうなりますか」
「ええ。相手の規模が規模です。玲一さんや藤一郎さんたちには既にご足労頂いていますし」
私はテーブルの上で鶏ささみと切り干し大根の胡麻酢和えを作っていた。これは胡麻の風味と、最後、全体に振りかける海苔の風味が肝心である。
「玲一さんに藤一郎さん、晃一郎さんに秀一郎さんですかあ。悩むわあ」
ほう、と味噌汁を作っていた撫子が乙女らしい溜息を吐くが。
「何でお前が悩む必要あんねん」
そこな。芳江が正しく突っ込みを入れてくれた。コトノハ処方における最高の遣い手は、私を抜きに数えれば聖、玲一、撫子、康醍あたりが上がる。康醍は老いて尚、気力盛んでそこらのコトノハ遣いや異能者は鼻もかけない勇ましさである。それに、堅田社長と同年代同士、通じるものがあるのではないかと思うのだ。私はまだ、対話の道筋を完全に閉ざしたくはなかった。
じゅわあ、と茄子を炒めながら、聖が何でもないことのように言った。
「そう言えば藤一郎君が撫子さんのことを褒めてましたよ」
「え、何て何て何てですのん?」
聖に迫る撫子。鼻息が荒い。油が飛んで火傷するぞ。
「モーニングスターの扱いをあれ程、こなす女性もいないと。……ああ、あと顔立ちがくっきりして美しいとも」
芳江の眉がピクリと動く。
「いやん、聖様、その後半が大切ですやんっ。嫌やわ、うち、どないしよう」
「どないもこないもないやろ。ええ加減、味噌を溶け。藤一郎さんの対人スキルの一つや」
「あ~、妬く男はしょうもな! ねえ、こと様。どう思います?」
そこで私に振らないでくれよ。
「撫子さんのお顔立ちが整っているのは確かですよ。それで夜半の夜叉衆ですが、」
「いっやああああん、こと様、おおきに。うち、白味噌か赤味噌か合わせ味噌か迷うてたんですけど赤味噌にしますわ!」
話の経緯が解らない。味噌のあれこれと撫子の顔立ちに何か関わりがあるだろうか。それより肝心の本題が進まない。芳江を見ると、彼は親の仇のように、ゴリゴリゴリゴリと白胡麻を擦っていた。整った顔がちょっと怖かった。
ブクマありがとうございます。
今日は、最近にしては涼しい一日でした。
撫子は筋肉達磨のようですが、顔立ちは整っています。
藤一郎はおべっかを言いません。




