表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コトノハ薬局  作者: 九藤 朋
続・宝珠争奪編 第三章
416/817

柳の樹に幽霊

 事の成り行きを傍観していた劉鳴は、おやおやと思っていた。これはかたたとらコーポレーションの内輪もめだろうか。芙蓉と名乗った女は消え、水谷景が二条を抱き上げている。あの芙蓉という女、闇の匂いがぷんぷんする。恐らくは、と劉鳴は考える赤い双眸を細めて。恐らくあの女は庶務課より尚、暗い仕事を請け負うかたたとらコーポレーションの凶器。

 問題はなぜ二条を襲ったかだが、何等かの手違いだろう。柳の横に黒い単衣を着て佇む劉鳴は、幽霊のようにも見える。非常にお誂え向きの恰好だ。腕組みをする。涼しい風が白い三つ編みに当たりどこかへ消えた。

「君はどう思いますか? 音ノ瀬隼太君」

 暗闇に声を投げると、紫陽花色の男が出て来た。

「こうしてお会いするのは初めてだね。知っているだろうが、僕は音ノ瀬劉鳴。天響奥の韻流継承者の師匠だ」

「あんたの存在は幻のように噂されていた。麒麟や鳳凰、見たこともない幻獣のように。幻の獣の存在を今、認識しているところだ」

 劉鳴が小さく笑う。

「そんな大したものじゃありませんよ」

「暴走したようだな」

「君もそう思いますか」

 芙蓉の話だ。話の急な転換にも劉鳴は狼狽えずついて行く。

「なぜ殺さなかった?」

「どちらの女性をですか」

「どちらもだ。放置すればいずれ音ノ瀬ことの妨げになるだろう」

「僕は血が嫌いです」

 ふ、と隼太が笑った。優し気な笑みだが鋭利を含んでいる。

「成程な。あんたくらいの実力者ともなれば、そんな好き嫌いも許されるんだろう」

「君も殺しませんでしたね」

「そうするだけの義理が音ノ瀬ことに対してない。音ノ瀬に就くとは言ったが、何でもかんでもあいつらに便宜を図ってやる積りはないし、その期待もされてはいないだろう」

「まあ、そうでしょうね。時分時です。どこかで飲みませんか?」

「俺の舌は煩いぞ」

「では少し歩きますが小料理屋さんに行きましょう。肴に外れのない店ですよ」

「良いだろう」

 黒い単衣と紫陽花色は、連れ立って小路の向こうに消えた。


 アーサーの緑の瞳が、それをじっと見ていた。



書くまでもないことですが、劉鳴も隼太も

幽霊の存在を最初から問題にしていません。

別にいてもいいんじゃないくらいに考えてます。

生きてる人間のほうが怖いですからね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ