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コトノハ薬局  作者: 九藤 朋
続・宝珠争奪編 第三章
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ラブレターの隠し場所

 宝珠を通して様々な人の様々な人生に触れた。喜びがあり悲しみがあり笑顔があり涙があった。私自身もまたその内の一人だった。以前、花屋敷に楓を取り戻しに行った時同様、私は文机の抽斗(ひきだし)に、私の死後の事柄について記した紙を入れている。出来ればそれを楓たちが開けることがないよう、祈っている。縁側に座った私は秋の風を頬に受けながら右手の平に乗せたものをじっと見つめた。それは楓がうちに来た時、初めて収集した蝉の抜け殻の一つだった。

 茶色く薄い化石のようなそれは半透明で、嘗てそこに命があったことを形として表現している。あの子がこれを拾ってから、色んなことがあった。楓ともし出逢えていなかったらと考えると、その世界線の恐ろしさにぞっとする。私はあの子に逢って多くを学んだ。母の心もその一つだ。

 釣忍が鳴っている。玲一が間もなく来るらしい。

 隼太がこちらに就いてくれるのは僥倖だ。音ノ瀬隼人に、隼太の他に孫がいたなど私も知った時は驚愕したものだったが、隼太にはそれ以上の重みある情報だろう。

「だーれだ」

 不意に目隠しされる。

 誰だと言っても私の隙を突いてこのような真似が出来る人間など限られている。

「どうしたんですか、師匠」

「もう少し驚いてくださいよ」

「驚いてますよ。いつまでも若々しい師匠に。これで半世紀は生きてるだなんて詐欺です」

 私が口を尖らせてそう言うと、劉鳴殿はあははと気持ちの良い笑い声を上げた。

「僕も年だけは人より多くとっていますからね」

 そう言って私の隣に腰を下ろす。長い白髪は、今日もきっちり一本の三つ編みとなっている。

「音ノ瀬隼人の軍部時代の話は意外でしたねえ」

「そうですね」

「子も孫も、まだ生きているようですよ」

「天響奥の韻流の情報網ですか」

「まあ、そんなところです」

 赤い瞳がおどけた様子で私を覗き込む。

「さあ、この続きを知りたいですか?」

「はい」

「ではほっぺにチュウを」

「はったたきますよ」

「怖い弟子ですねえ。コトノハが使えるようです」

「…………」

「音ノ瀬隼太より先に逢っておいたが良いでしょうね」



ブクマありがとうございます。

ついに半袖を買いました。

けれど湯たんぽもまだ使っています。

使うとよく眠れるのです…。

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