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コトノハ薬局  作者: 九藤 朋
続・宝珠争奪編 第三章
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あなたのいない世界を許さない

 私は両腕の中に楓をすっぽり納めていた。最近、スキンシップが足りなかったように思い、寂しかったのだ。錦秋間近な風が障子を揺らす音を聴きながら、私は自室で少女を抱擁していた。楓は嫌がるでもなく、逆に額を私の肩に乗せてくる。

「ことさん」

 糖分の多い声は私の心を蕩かせる。藤色の着物を着た私の腕にいる楓は、濃い紫のワンピースを着ている。外から見たら一輪の花のグラデーションと思えたかもしれない。楓が、私の中から自らの両腕を伸ばして、私の首に絡みつかせる。

「ことさん、たくさん、忙しいよね」

「はい。すみません」

「みんなが、ことさんのこと、大好きだから。仕方ないね」

 私は楓の顔を覗き込み、視線を合わせる。

「私は特別に楓さんが大好きですよ?」

「……ひーくんが、いるでしょ」

「比べられません。最愛が二人。夫と娘だからと言って、楓さんは私を責めますか?」

「……ううん。ごめん。私、昔よりずっとたくさんのものを持っているのに、欲張り……」

 さらさらと、揺れる髪の毛。

「楓さん。聖さんのことを私は愛していますが、楓さんと聖さんが同時に危機に陥っていたなら、迷わず楓さんの元に走りますよ」

「それは、ひーくんが強いから、」

「だけではなく。貴方が私の掌中の珠だから。宝珠にも比べられない、私の大事な子だからです」

 楓がぎゅっと身体を押し付けて来た。

「私、ことさんが、世界で一番、好き。恭司君には悪いなって思うけど、だって、

ことさんは、私の世界なの。私を構築する世界なの。ことさんが、もしいなくなったら、私もきっと生きていけない。ごめんね。ことさんは、きっと自分が……死んでも私の未来を望んでくれるのだろうけど、それは無理。もう終わってしまう」


 胸が苦しい。身体が発光しているかのように熱い。魂ごとぶつかってくる子に、何と言って抗えようか。

「宝珠を」

 情けなくも声が震えた。

「宝珠を一刻も早く集めましょう。楓さんをも終わらせたら、私は全てにおいて失格です」


 現時点で収集出来ている宝珠の数は、七十四個。



ブクマ、評価、ありがとうございます。

これは濃厚な親子愛であり、百合ではありません。

ちょっと二人の溺愛ぶりを書きたかったんです。

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