あなたのいない世界を許さない
私は両腕の中に楓をすっぽり納めていた。最近、スキンシップが足りなかったように思い、寂しかったのだ。錦秋間近な風が障子を揺らす音を聴きながら、私は自室で少女を抱擁していた。楓は嫌がるでもなく、逆に額を私の肩に乗せてくる。
「ことさん」
糖分の多い声は私の心を蕩かせる。藤色の着物を着た私の腕にいる楓は、濃い紫のワンピースを着ている。外から見たら一輪の花のグラデーションと思えたかもしれない。楓が、私の中から自らの両腕を伸ばして、私の首に絡みつかせる。
「ことさん、たくさん、忙しいよね」
「はい。すみません」
「みんなが、ことさんのこと、大好きだから。仕方ないね」
私は楓の顔を覗き込み、視線を合わせる。
「私は特別に楓さんが大好きですよ?」
「……ひーくんが、いるでしょ」
「比べられません。最愛が二人。夫と娘だからと言って、楓さんは私を責めますか?」
「……ううん。ごめん。私、昔よりずっとたくさんのものを持っているのに、欲張り……」
さらさらと、揺れる髪の毛。
「楓さん。聖さんのことを私は愛していますが、楓さんと聖さんが同時に危機に陥っていたなら、迷わず楓さんの元に走りますよ」
「それは、ひーくんが強いから、」
「だけではなく。貴方が私の掌中の珠だから。宝珠にも比べられない、私の大事な子だからです」
楓がぎゅっと身体を押し付けて来た。
「私、ことさんが、世界で一番、好き。恭司君には悪いなって思うけど、だって、
ことさんは、私の世界なの。私を構築する世界なの。ことさんが、もしいなくなったら、私もきっと生きていけない。ごめんね。ことさんは、きっと自分が……死んでも私の未来を望んでくれるのだろうけど、それは無理。もう終わってしまう」
胸が苦しい。身体が発光しているかのように熱い。魂ごとぶつかってくる子に、何と言って抗えようか。
「宝珠を」
情けなくも声が震えた。
「宝珠を一刻も早く集めましょう。楓さんをも終わらせたら、私は全てにおいて失格です」
現時点で収集出来ている宝珠の数は、七十四個。
ブクマ、評価、ありがとうございます。
これは濃厚な親子愛であり、百合ではありません。
ちょっと二人の溺愛ぶりを書きたかったんです。




