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コトノハ薬局  作者: 九藤 朋
続・宝珠争奪編 第三章
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死にたくない

 空が泣いているようだ。

 誰の代わりに泣いているのか。今頃、身を切る思いでいる寺原田か。或いはその部下たちか。

 私は濡れないギリギリのところで縁側に座し、雨に手を伸べていた。ほつり、ほつり、小さな雫に指先が浴する。大岩を粉砕した恭司は三日後に戻って来た。戻って来たと言うより、うちの門前で行き倒れていた。その心意気や良しと思ったが、楓が泣きそうな顔になっていたので、余り褒めることも出来ず、正気付かせて彼にとって何日振りになろうかという食事を摂らせ、風呂に入れて寝かせた。爆睡する恭司の横に、楓はじっと寄り添っていて、その様子がとてもいじらしかった。


 一際、大きな雫を私は手の平で受け、握り込んだ。秀一郎や玲一は当初、寺原田の申し入れに懐疑的だった。私の説得でようやく、彼らの受け容れに向けて動き始めた。寺原田と彼に追随する部下たちは戦力になるだろう。だが同時に堅田社長の逆鱗に触れる。音ノ瀬は余計な敵を作ることになる。目を閉じ、雨音に耳を澄ます。雫の合唱と称するには寂しい音量だ。

 私は、聖が今頃どうしているかと考える。かたたとらコーポレーションの社屋にいるのか、それとも屋外で濡れているのか。あのダウンジャケットは、街で見掛けて聖に似合いそうだと思い、買い求めたのだ。本当はもう少し後に、何かの記念になりそうな日に渡そうと思っていた。しかし、聖の笑顔を思い、まあ良いかという気になる。聖は、大切そうな手つきであれを扱ってくれた。隼太の紫陽花色のコートに劣らず、心を籠めて使ってくれるだろう。雨の匂いが濃厚に、緑と共に鼻に襲来する。

 隼太は、あのはぐれ狼のような男は、現状を把握しているだろうか。しているだろう。私は自問自答する。情報には非常に敏い男だ。戦況を面白がって高みの見物と洒落込むに違いない。それとも堅田社長に就くか。隼太を得るに、値する対価を準備出来るのは、音ノ瀬よりもかたたとらコーポレーションであるように思う。生臭い利益を望むなら尚更。だが、隠れ山がある。隼太は隠れ山に住まう同胞を害する者に容赦しない。かたたとらコーポレーションは一度、失敗している。狼の動きは読めない。それでも。


「隼太さん。力を貸してくださいませんか。私はまだ」


 コトノハと雨音が融け合い絡まり落ちる。


 私はまだ。



ブクマ、評価、ありがとうございます。

天候不順で体調を崩される方が多いようです。

どうぞご無理のなきよう、深く呼吸されてください。

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