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コトノハ薬局  作者: 九藤 朋
続・宝珠争奪編 第三章
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グッドニュース

 日が沈む。

 金色を我が世の春と謳歌していた日輪が闇に没する。

 隼太はその光景を音ノ瀬家に程近い歩道から眺めていた。近くには藪と、ごみ捨て場がある。今日の風は繊細にして隼太に好意的で、音ノ瀬家における会談の内容も、全て彼の知るところとなった。

 寺原田の寝返り。堅田は許すまい。器の大小の問題ではなく、戦略的に認め得ないことだからだ。果たして庶務課の人間の、何人が寺原田の舟に同乗するか。賭けに負ければ海中深く沈むのは必至である。藪がざわめき、黒い野良猫が飛び出て隼太を金色の丸い目で見て、一瞬後には駆け去った。隼太は野良猫にも寺原田にも特に思うところはない。

 だが、安寧の地を捨ててまで部下を想うその志は稀有のものと感じる。ひとまず現時点において、この舞台に自分の出番はなさそうである。グラスでも傾けながらゆるりと鑑賞するか。どちらかの陣営が三顧の礼を以て隼太の元へ来るのであれば、参戦を考えるにやぶさかではない。どちらにしろ隼太は、自分にとって愉快であればそれで良かった。

 寺原田は部下の過去を随分と憐れんでいたが、そんな人間は五万といる。掬い上げずにはおけないタイプであると言うのであればことと通じるものがある。そのあたりは隼太には苛立ちの元となるところであった。日が完全に没し、あたりが闇に支配されていく。昼間は目立たなかった白い月が皓々としてさながら女王の如くに君臨する。星の幽かな歌を掻き消すように。

 隼太は歩き出した。近くの山中では今頃、恭司が健気にも修行中の筈だ。一人、蚊帳(かや)の外に置かれたと知れば立腹するだろう。無論、隼太に、山中までこれから赴き、励ましがてら情報をあてがうなどという、砂糖を吐くような行為をする積りは微塵もない。

 烏の隼太が、があと鳴いて隼太の肩に留まった。

 この重みにももう慣れた。

 隼太は音ノ瀬家を避けるように道を迂回して歩き始めた。何せ、今あの家には厄介なコトノハの手練ればかりが集っている。武器まで使うとあっては、いくら不遜な隼太であっても一人で相手取る気にはなれない。グッドニュースをありがとうよ、と心の中でだけ礼を言い、革靴を鳴らした。よく磨き込まれた革靴の先は月光を小さく弾いていた。



ブクマありがとうございます。

家人が山野草を採取して、何と言う名前か

調べています。愛らしい小花の、名が判ると

一層可愛く見えるのが不思議です。

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