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コトノハ薬局  作者: 九藤 朋
続・宝珠争奪編 第三章
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濃紺色のダウンジャケット

 寺原田が帰った後、私たちの間には譲り合うような沈黙が生まれた。

「ええお人ですね」

「せやな。(おとこ)や」

 評した撫子に芳江も相槌を打つ。私も同意見だが、他に危惧するところがあった。寺原田の身の安全である。堅田社長は抜け目がない。ああいうタイプは裏切りにも敏感だ。そして往々にして裏切者への制裁は容赦ない。自らも異能を持つ寺原田だ、ある程度の自衛は出来るだろうが一人で処すには限界がある。

「聖さん。しばらく寺原田さんの身辺警護をお願い出来ますか」

「承知しました」

「それでしたらわざわざ聖様が行かれんかて、俺が行きますのに」

「芳江さんは撫子さんを。これから私たちは防衛戦に移ると思います。戦いの主導権は攻め手にある。守るほうが(かた)いのです。敵の出方はまだ解りませんが……、私たちが備えるに越したことはないでしょう」

「撫子さん、芳江さん。こと様を頼みます」

「任しとくなはれ、聖様。奥方様には敵の指一本、触れさせませんで!」

 力強く請け負う撫子に、聖がほんの一瞬、複雑な真紅の色合いを見せた。聖は、寺原田の警護より、私をこそ守りたいのだろう。だが、私が主命を下し、懇願した。撥ねつけることなど出来よう筈もない。

 私は寺原田と交換したスマホの番号に電話を掛け、聖がボディーガードに就く旨、伝えた。寺原田は当初、難渋を示したが、私が譲らぬ態度を見せると承諾した。ボディーガードと言っても聖は寺原田家に押し掛ける訳ではない。飽くまで外からの警護に当たる。

 私は、自室に行き、ブランド物のロゴ入りの紙袋を持ち、再び客間に戻った。

「はい、聖さん」

 紙袋を受け取った聖は、顔に疑問符を浮かべながら中身をそっと取り出した。濃紺のダウンジャケット。聖の白髪によく映える。

「最近は夜も涼しくなってきましたから、必要であればそれを羽織ってください」

 聖がジャケットを捧げ持つ。

「寺原田さんよりジャケットを守ることを優先して良いですか」

「それは駄目です」

 どこまで本気か判らない聖に返すと、聖は朗らかな笑顔を見せた。



ブクマありがとうございます。

空が青く鳥が飛び、花が咲き綻ぶように。

皆さまのご健勝を祈っております。

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