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コトノハ薬局  作者: 九藤 朋
続・宝珠争奪編 第二章
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時報のメロディー

 私は無言で隼太を見た。隼太は追随から逃れるように目を逸らした。

 らしくない物言いだ。彼は軽口を言うが、切迫した状況下では水に垂らした油のようだ。隼太はすぐに冗談だと言って、身を翻した。私も後を追う。彼から憂愁の気配を感じたのはごく僅かな時間だった。

 花屋敷の裏手の敷地は、戦場と化していた。聖と撫子、芳江がそれぞれ敵に応戦している。眼鏡の男は太刀を持っていた。聖の銀浄と、撫子のモーニングスターを同時に相手取るには荷が重そうだ。当然の帰結ではある。

 芳江は樹木の間に身を挟むようにして金髪の外国人の銃に対して杖で渡り合っていた。上手い。樹木を盾にしながらの杖の突きが絶妙だ。拳銃と全く劣らないどころか優勢を保っている。

 彼らは皆、私と隼太の登場に気づくと、それぞれの感情を面に出した。この場で私たちが現れることは何を意味するか明白だったからである。戦力の天秤の大きな傾き。

「退きなさい」

 一時、動きを止めたかたたとらコーポレーション庶務課員であろう男たちに、厳然として命じる。黄金の髪の男がく、と笑った。

「戦わなければ何も生まれない。戦えばどちらかの死体が残る。或いは両方の」

「今、論じるには賢くない言葉ですね。命を粗末にしたいのですか」

「貴方は俺たちを殺さない」

 ふと笑みを零す。

「過ぎた信頼は命取りですよ」

 男が発砲した。弾は私から大きく外れ、隼太の横を飛んで行った。

「愚かですね。そこまでして力が欲しいのですか」

「貴方も宝珠を欲している。我欲の為に」

 痛いところを突く。

「うたかたはかつ消えかつ結びて久しくとどまりたる例なし」

 私は男二人を飛ばした。

「堅田社長にお伝えなさい。音ノ瀬を敵に回すとどういうことになるかと」

 彼らが星の如く小さくなる前に、私は言伝を託した。きっとあの老獪な社長はこの程度ではびくとも揺らぐまいが。聖が私に、芳江が撫子に駆け寄った。隼太は連れ去られそうだった花屋敷の住人たちに声を掛けている。彼はここでは信頼されているのだ。私もそれに続き、不意の災難に茫然としている人たちの安否を確認する。


 風呂に入りたいな。


 楓と撫子と三人で。産湯のような温かいお湯に浸かりたい。

 私は疲弊していた。



ブクマありがとうございます。

今日も冷えていました。美味しい熱いものを

食べて身体の内から温もりました。

つつじがもう見頃ですね。

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