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コトノハ薬局  作者: 九藤 朋
続・宝珠争奪編 第二章
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夜間飛行

 楓は無事だった。

 まずはそれが何より肝要だ。鬼気迫る形相で戻った私たちに、何事かあったと察したらしい玲一たちも顔を引き締める。

「御当主。何がございました」

「かたたとらコーポレーションの狙いは宝珠と、コトノハ使いたちです。隠れ山に目をつけています。恐らく今頃、急襲している筈」

「何と。それは」

「今から隠れ山まで飛びます。秀一郎さん、同行してください」

「お待ちください、御当主。我々は」

「ここで楓さんと宝珠を守ってください。今夜は隠れ山に注力すると思いますが、万が一ということもあります」

 早口で説明する私の話に、玲一たちは真剣な面持ちで耳を傾けている。

「ことさん。危ないことになるの」

 楓の顔も不安に曇っている。

「大丈夫ですよ、楓さん。必ず戻ります。玲一さんたちと一緒に、この家の守りを頼みます」

「――――はい」

 この、聴き分けの良さが私の胸に感傷を呼ぶ。もっと不安を吐露して行かないでと縋ることも出来る年齢だ。けれど楓はそんな行為を選ばない。私はふと思い立って、スマホを忙しく操作した。

「恭司さんですか。至急、うちに来てください。うちに来て、楓さんを守って。仔細は玲一さんたちに聴いてください」

 手短に通話を終え、私は急ぎ自室に行き、着物を脱いで動きやすい服装に着替える。撫子も今頃、ドレスを脱いでいることだろう。

 支度の整った私、聖、秀一郎、撫子、芳江、は庭に出た。円になり手を結ぶ。

「手を決して離さないでください」

 撫子たちは強く頷く。飛空の術を撫子らの前で使うのは初めてだが、それで怖気づく彼らではないだろう。

「うたかたはかつ消えかつ結びて久しくとどまりたる例なし」

 ふわりとした浮遊感。

 次いで強い風が身体を叩く。

 心細そうな星の光る夜空を、私たちは飛んだ。



ブクマありがとうございます。

藤の花が今を盛りと見頃です。

藤紫はとても好きな色の一つです。

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