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コトノハ薬局  作者: 九藤 朋
続・宝珠争奪編 第一章
358/817

リーフ

 私は少し歩いたところにある森林公園の中のベンチに座り、文庫本をめくっていた。淡い茜の訪問着を纏い、帯は黒に近い紺である。夏の名残か陽射しが強い。日傘を持ってくれば良かったか。

「……なあ」

 帰りに甘味処にでも寄ろうかな。

「なあおい」

「何ですか、恭司さん」

「やらされてることが意味不明なんだけど」

「良いから黙って南京(なんきん)(はぜ)の葉の枚数を数えなさい」

「それに何の意味があるんだよ」

「集中力を養い雑念を払うのです。動きを見ていれば解ります。恭司さん、貴方、剣術は丸きりの素人でしょう。今まで持ち前の反射神経と体術だけでやって来た。天の構えや正眼、地の構えやらを教えても現状、意味がありません。いずれは身に着けていただきますが。それでなくても天響奥の韻流は独特の流派なのです。私にも焦りはあります。意地悪で遠回りをさせている訳ではありません。とにかく言われたことをしてください」

 恭司の目に僅かに浮かぶ疑念。まあ、そうだろうな。

「手本を示してくれよ。先輩」

「師匠と呼びなさい。良いでしょう」

 私は文庫本を置き、持って来ていた二本の竹刀の内、一本を恭司に向けて放った。残る一本を、緩く構える。

 恭司の構えはまだ構えとすら言えない。それでも隙が少ないのは伊達ではないと称するべきところか。

「どこからでも良いですよ。打ち込んで来なさい」

 恭司の身体がふ、と消えた。

 高い跳躍。やはり彼は生まれ持っての高い身体能力に頼るところが大きい。

 振り下ろされた竹刀を、私はあっさり払いのけた。バランスを崩しかけながらも恭司が着地する。

「……」

「気が済んだなら葉を数える作業に戻りなさい。この後は特別講師を呼んであります」

「特別講師?」

「ええ。天響奥の韻流は秘技ですが、彼女は伝授に関わることを許されている」

「彼女?」

「照美咲院撫子さんです」


 恭司の顔が思い切り引きつった。



今日も少し冷えましたね。

九藤は湯たんぽさんと仲良しな日々です。

皆さまもお身体を冷やさないようにしてくださいね。

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